羽毛布団の内部構造と寝心地の関係

お客様からのお問い合わせで、羽毛布団の内部構造パターンの違いによる保温力の違いについて質問を受けました。

「ある寝具店で○○方式のキルトパターンは他のキルトと比べて20%以上暖かいとの説明をうけたが本当ですか?」という内容でした。

内部構造の違いで保温力20%UP?

保温力20%UPは、売りを優先するあまりのオーバートークである旨を説明致しました。

キルトパターンの違いだけで20%はあり得ません。○○方式のキルトパターンにする事で暖かさが20%アップするのであれば、各メーカーは特許料を払ってもそのキルトを採用するかもしれません。その前に20%も暖かくなると暑くて眠れません。

羽毛布団のキルトパターンの違いと寝心地についてご説明致します。

内部構造キルトパターンの分類

現在販売されている羽毛布団の内部構造において、大きく分けると立体1層2層、3層構造のように層によるパターンの違による分類ができると思います。

他の分け方としては、羽毛布団は格子状に内部をブロックされていますが、このブロックの数の違いとか、襟元足下のブロックの大きさと形状の違いがございます。外観からは判らない違いとしては、ブロック間の羽毛の移動を防止する密閉キルトがございます。

羽毛布団の保温力の違いは

羽毛布団の暖かさは、体から出る熱をふとん内部に蓄えて、適度に放熱する事で適温を保つことで実現しています。

当たり前のことですが羽毛布団自体は熱を出しません。熱はふとん内部にできた空気層に蓄えられています。この空気層の保温性能(ダウンの品質)と形状(厚み)により、羽毛布団の保温力に差ができます。

最近では、側生地自体が反射熱を出すような繊維もできています。体感する暖かさ言いかえると寝床内部の暖かさは、ふとん内部の保温力以外にも体にフィットする事で熱を逃がさないフィット性も大切なポイントです。

布団の厚みとフィット性においては、ダウンの品質・量と側生地素材の品質も関係しますが、キルトパターン1層式、2層式などの内部構造の違いも関係しています。

キルトパターンの違いによる暖かさの差

先にも申しましたが、羽毛布団は格子状にブロックに分かれています。このブロックの境目(縫い目)は布団の厚みが薄くなります。薄くなることは保温力が下がる事を意味します。この境目の部分は、表面の凹凸の凹の部分であり、裏面においては「逆さ凹」の状態になるため、どうしても保温力が低下しています。

そこで2層、3層構造の羽毛布団が作られました。2層構造とは上層と下層の格子状のブロックの数が異なります。

例えば上層が横に3ブロック縦に4ブロックの12ブロックにして、下層は横に4ブロック縦に5ブロックの20ブロックにすると、上層と下層の凹の位置がずれることで、羽毛布団の厚みを平均化するすることができ、保温力をバランス良く安定化させています。3層構造は、2層構造をさらに改善したものです。

羽毛布団が暖かい要因の1つにフィット性にあります。フィット性を向上させるには、羽毛の量と側生地素材にも当然関係しますがキルトパターンも関係します。

羽毛は一つのブロック内でも足下の方向に偏る傾向がございます。そこで襟元足下部分とか、周辺の額縁部分のブロックの形状を細長くすることで、フィット性をアップさせたキルトパターンもございます。

2層、3層構造において下層部分を額縁のように細いブロックにしたキルトもございます。店主のお気に入りのキルトパターンの1つに、(株)京都西川(現:西川(株))の3層構造ダブルフェイスの羽毛布団がございます。暖かさの点では2層の方が暖かいものもありますが、間の空気層が「まろやかな温もり」を作りだしているように感じます。お勧めしたい羽毛布団のキルトパターンです。

羽毛布団の内部構造による寝心地感

お客様からの問い合わせに、「ある寝具店において、2層、3層構造にすると1層構造と比べて20%暖かくなる。」との説明を受けたが真実か??との質問がありました。下記の様にご案内を致しました。

仮に同質、同量のダウンを同じ側生地で、キルトパターンを違えた布団に充填したとして、暖かさに20%の差をつけることは通常できないと考えます。

2層、3層にする場合は、層を作るために、例えば2層構造の場合には上層と下層を仕切る布(ナイロンタフタなど)が必要になります。立体1層構造と比較すると、この生地の存在で保温力は少しは増すと思いますが、それ以上に2層3層にする事で空気層を厚く平均化する事による保温力のアップが大きいと思います。

しかし、それでも20%の差はないと思います。科学的なデータはございませんが、寝床内の適温は約33℃前後だとすると、掛け布団の保温力が20%アップとしたとすると、寝床内の温度は約40度になります。熱帯夜の中で寝ることになる旨の説明を致しました。感覚的なものですが1層構造よりか2層3層構造が少し暖かいように感じます。

上記の羽毛布団は、ダウンパワーは少なくとも400cm3/g以上で、ダウン充填量は1.2kg-1.3kg程度、側生地は60超長綿相当、マチ幅は5cm程度を想定しています。敷きふとんにおいても適温を保つことができる品質のものを想定しています。寝床内の温度は敷き寝具の保温力も影響しています。今回は1層立体構造と2層構造の保温力の違いについてのみ説明を致しました。

寝床内の温度は寝具以外にも寝室の温度も関係があります。詳しくは下記サイトをご覧ください。

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筆者:野口 英輝

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