日本繊維製品品質技術センターの羽毛品質検査と羽毛布団品質

日本繊維製品品質技術センター(QTEC)に先日訪問をしてきました。訪問の主たる目的は羽毛布団の品質について精確に説明できるようになるためです。
QTECにおいて羽毛布団の品質の中でも「羽毛品質」をどのように調べているかについて解ったことをご紹介します。
鳥種混合率、ダウン率、ダウンパワーの意味がより正確にご理解頂ければと思います。

一般財団法人日本繊維製品品質技術センターとは

QTECを一言で言えば、繊維製品を中心とした総合試験・検査機関です。
今回は羽毛の品質検査について教えて頂きました。
羽毛布団に充填されている羽毛の品質検査は、鳥の種類、見分け方、ダウンの組成表示(ダウン率)と混合率、かさ高性(ダウンパワー)、フィルパワー、ダウンの吹き出し、ダウンの清浄性評価、羽毛製品の臭いなどに付いての検査方法です。

鳥の種類とダウンの混合率とかさ高性

ダウンの試料の量などの説明を受けました。羽毛の組成成分を調べる試料の量は3gと聞いて驚きました。
例えばダウンパワー440dpの3gの量はどのくらいかと言いますと、加重された状態の容積では1320ml、自然な状態だとおおよそ3000ml程度になると思います。この中の一粒一粒を分類していくわけです。
大変根気の要る作業です。

ダウンの鳥の種類の試験

鳥の種類を判別するにはダウン50粒を顕微鏡等で拡大して調べます。50個は少ない様ですが調べるとなると大変な作業です。
具体的には、一粒ずつ顕微鏡で羽枝の太さとか羽枝に付いている小羽枝の付き方を調べることでグースかダックかを見分けています。
調べた結果、グース又はダックのいずれかが50個のうち6%の3個以上混在していれば、更に50個を新たに調べる作業をしています。
このように調べた結果が鳥種混合率と言うものです。日羽協の基準では10%未満とされています。なせ混ざるのかを考えたときに鳥種混合率10%はゆるい数値と思います。
グースとダックの羽毛の見分け方は、小羽枝の付き方がダックは羽枝の先端部分に集まり羽枝の軸が太いという特徴で見分けています。

ダウン率の調べ方

羽毛3gの試料を2段階に分けて調べます。
第一段階では、小さい羽根、大きい羽根、損傷羽根、陸鳥の羽根、植物繊維などのゴミ、ダウン及びファイバー(繊維状の羽枝)に選別します。
第二段階では、第一段階でのダウン及びファイバーから約0.2gの試験試料を取り出し、ダウン、ダウンファイバー、フェザーファイバーに分けます。第一段階で取り出したファイバーをダウンのファイバーか羽根のファイバーなのかを区別しています。
羽根のファイバーはフェザーとしてカウントします。
それぞれ質量(重さ)比から8種類の混合率を求めます。その結果がダウン:フェザーの様にダウン率として示されます。
ダウンのファイバーはダウンとしてカウントされます。このことはダウン率だけでは羽毛の善し悪しが判断できないことを意味します。
詳しくはダウン率のページをご覧下さい。

ダウンパワーの調べ方

一言で言うと前処理をした30gのダウンを筒に入れて加重して1g当たりの体積を算出した値です。
ただこの前処理は、試料約35gをステンレス金網の容器に入れて、ドライヤーで乾燥してスチームを当て更にドライヤーで乾燥後24時間放置した後、さらにドライヤーを当て5時間放置した試料を30g取り出し検査します。
少なくとも30時間以上はかかります。
ダックダウンの羽枝の軸が太いと説明しましたが、このことはダックダウンは羽枝の張りが強くダウンパワーがやや高くなる傾向があることを意味しています。
ダウンパワーに付いて詳細は、下記のページにてご案内をしています。
かさ高性ダウンパワー値
羽毛布団の選び方

羽毛製品の臭い

一般財団法人日本繊維製品品質技術センターでの羽毛の鳥特有の臭いの検査に付いて説明します。
どのように検査するかというと、臭覚検査を受けて合格した検査員5名により臭いの強度と不快感を評価して官能値の平均値を算出する方法とのことでした。
平たく言えば、5人のうち3人が不快と感じたらそのダウンは臭いにおいて不合格となるとのことでした。
科学的でないかもしれませんが、最も精度の高い検査とも言えるのではないでしょうか。
もちろん官能的な検査だけでなく科学的な数値によるものもありました。
洗浄度の試験:ダウンを洗浄した水の透明度の試験です。業界の基準は500mm以上。
酸素計数試験:臭いの発生原因となる有機物残留量を調べる検査。業界の基準は4.8mg以下。
油脂分率試験:臭いや生地へのシミだし発生原因となる残留油脂分を調べる検査。業界の基準は1%以下。
羽毛布団の鳥特有の強烈な臭いは、主に油脂分率が高いと思います。ダックの若鶏のダウンに臭いの問題が多いことからも理解できます。
有機物残留量とか残留油脂分の基準値が設けられていることは、全く無臭の羽毛は無いことを意味しています。油脂分はある程度残していることを意味します。

まとめ

日本繊維製品品質技術センターにおける羽毛品質検査は手間暇のかかる作業です。この試験結果に基づいて羽毛の品質表示がされています。
この試験結果に基づいて日羽協の会員は、羽毛の品質に応じたゴールドラベルを添付しています。
羽毛布団の品質指標にて品質を判断する際に、この検査方法の中身を十分に知ることでより正確な品質ランクを見極めることに役立つと思います。