羊毛の夾雑物と化炭処理

羊毛の夾雑物(ゴミ)と化炭処理

ウールは元をただせば羊さんの断熱防寒着です。暑さ?寒さから身をまもる布団のような存在でもあります。羊さんは基本的に屋外で放牧されているので、草の実とかの植物繊維が毛に付着しています。毛を刈った後の処理でこの植物繊維(夾雑物きょうざつぶつ)をある程度は取り除くのですが、日本国内に輸入された段階では、まだ多くの夾雑物が付着しています。基本的に放牧は屋外なのですが、夾雑物を少なくする目的なのか?屋内で飼育している農場もあるようです。

化炭羊毛ウール

この夾雑物(ゴミ)の除去をする方法の一つが化炭処理です。薬品を使い取り除いているため、羊毛繊維のラノリン脂分の減少は避けられません。そのため羊毛本来の特質である吸湿放湿性、弾力性は変化しますが、この処理をしないと羊毛繊維に付着した植物繊維によるザラザラ、チクチク感が出てしまいます。ただ完全に取り除くことはできません。この処理をしても僅かに残るものだと考えて下さい。下記の写真をご覧下さい。
化炭羊毛サンプル
中央のものがフランス産化炭ウールです。左がウォシャブルウールです。右側がウールの女王と呼ばれているメリノウールです。夾雑物はウォシャブルウール、フランス産化炭ウール、メリノウールの順番に少なくなっています。解りづらいかもしれませんが、フランス産化炭ウールと比べるとウォシャブルウールの方が夾雑物が多く残されています。理由は、化炭処理をしてはいるがウォシャブルにするために防縮加工をする必要があるため、化炭処理を強くすることができなかったものと考えられます。

羊の種とランク別敷布団サンプル

羊毛で敷き布団のサンプルを作ったところ、この夾雑物によるチクチク感があるものがあり、今回はフランス産化炭ウールで再度サンプルを作り直す事になりました。この化炭ウールで作ったとしても夾雑物を100%除去することできないので、もしかするとザラザラ、チクチク感があるかもしれませんが確率は低いと思います。側生地は羽毛布団に使用するほどは高密度ではありませんが、205本/インチ程度糸を打ち込んだものを使用することで、羊毛繊維の吹き出しを防ぐことができると思います。このチクチク感は羊毛繊維の中に特別に太くて硬いものがあり、この繊維によるものもあります。 ウールの女王であるメリノウールのサンプルには夾雑物がほとんどないものです。さすがにメリノウール繊維は、フンワリと柔らかくて素晴らしいものです。しかし、敷き布団の中綿としては繊維が細く張りが弱いためヘタリが気になるところです。羊の種と飼育方法、飼育期間の違いと化炭処理等の有無により羊毛綿の特徴が異なってきます。化炭処理はしませんが、羽毛布団に使用されているダウンの品質と共通するところがあります。

羊毛のコストと化炭処理

羊毛綿の夾雑物を取り除く化炭処理をするとコストは上がりまが、チクチク感とか異物感は間違いなく減少します。同時に羊毛繊維の特徴てある吸湿放湿性とか弾力耐久性は下がります。どこで折り合いを付けるかが問題です。敷き布団の上にパッド等を掛けるので敷き布団の上に直接寝るのではないので、少々の夾雑物はあっても良く羊毛繊維の特徴を前面に出しての提案が良いのか?迷う所です。市販されている高級品はどうかといえば、元々上質のランクのウールを化炭処理しているものが多いようです。そのため今回はフランス産化炭羊毛綿で2層100%羊毛敷き布団のサンプルを新たにつくることにいたしました。できあがりまでには今しばらく時間が掛かりますが、湿度が高くなる梅雨の時期までには、吸湿放湿性に優れた100%ウール綿をしようした、羊毛敷き布団をご提案できればと計画中です。京都西川の敷き布団ローズラジカルとの併用をお勧めしたいです。