羽毛布団の種類と用途の違いとは|特徴・羽毛量・最適な使い方を比較
羽毛布団は、「本掛け」「合掛け」「肌掛け」の3種類に分類され、それぞれ保温力や適した室温帯に違いがあります。ただし、使用可能な温度帯は一部重なるため、季節だけでなく体質や住環境に合わせた選び方が快適な眠りのカギとなります。
たとえば、冬でも暖かい室内なら合掛けで十分な場合もありますし、冷え性の方なら春秋でも本掛けが必要になることも。正しく理解すれば、冷えや寝汗などの不快感を避け、快眠に近づけます。
以下の図は、各種類の羽毛布団が快適に使える室温帯を示したイメージです。

羽毛布団の快適性は、「羽毛の質・量」「キルト構造」「側生地」など複数の要素で決まります。それぞれが組み合わさることで、保温性・フィット性・通気性・価格帯に違いが出てきます。スペックの違いを知り、自分に合った条件を選ぶことが、失敗しない購入の第一歩です。
下記の比較表では、羽毛布団の種類別に、最適な室温帯や羽毛量の目安、主な用途・時期をまとめました。
羽毛布団の種類と用途・使用時期の目安
この表からもわかるように、羽毛量や最適な室温帯は種類ごとに明確に異なります。とくに羽毛量の差は保温力に直結し、季節や環境に適した選択の基準となります。
※快適な室温帯はあくまで目安です。実際の暖かさは、羽毛の種類(グース・ダック)や品質、キルト構造、側生地によって変わるため、スペックを総合的に確認することが大切です。
次章では、羽毛布団の保温性を左右する「羽毛の種類」「構造」「生地」の違いについて詳しく解説していきます。
羽毛布団の保温性を左右する5つのポイント
羽毛布団を選ぶ際の重要な要素は下記の5点です。これらが組み合わさって、あなたにぴったりの一枚が見えてきます:
- 羽毛の種類(ダック・グース・マザーグース)
- ダウン率
- ダウンパワー(かさ高性能)
- 充填量
- キルト構造と側生地素材
以下で、それぞれのポイントを詳しくご紹介します。
1. 羽毛の種類と保温力の違い
羽毛布団の暖かさは、主に使用される羽毛の種類で決まります。一般的に使われるのは:
- ダックダウン:保温性は低めで量が必要。低価格で暖かい寝室向き。
- グースダウン:保温・耐久性のバランス良。標準的な選択
- マザーグース:最高級。軽量で少量でも高保温
グース以上はダウンボールが大きく、保温性と軽さに優れます。マザーグースは、軽く暖かく温度調節にも優れた、快適な羽毛布団の選択肢です。
2. ダウン率・ダウンパワーで品質を見極める
羽毛の品質は以下2つの指標で判断できます:
- ダウン率:羽毛中の綿毛(ダウン)の割合。高ければ軽くて暖かいが、未成熟なダウンも含まれるため数値だけでは判断できません。
- ダウンパワー(dp):羽毛のふくらみ具合を数値化。暖かさの目安として重要な指標です。単位はdp。
日本羽毛製品協同組合(日羽協)の基準は「400dp・ダウン率90 %」を標準的な品質基準とし、ロイヤルゴールド(90%・400dp)以上が安心ラインです。さらに、440dp以上・93%以上なら上質な暖かさを期待できます。
※ダックダウンは軸が太いため、表示dpより実際の暖かさはやや低めです。実感に合わせ、メーカー選びも重要です。
3. 羽毛量と適切な暖かさ
羽毛量が増えれば暖かさも増しますが、ダウンパワーが高ければ軽くて暖かい布団が作れます。目安として:
- 本掛け(冬用):1,000〜1,200g(ダックは1,500g)
- 合掛け(春秋用):600〜900g
- 肌掛け(夏用・ダウンケット):300〜400g
冷え性や寒冷地では、標準より約100g多めがおすすめです。
4. キルト構造が保温性と快適性を左右
羽毛の片寄りを防ぎ、空気の層をしっかり確保するのが「キルト構造(縫製方法)」です。構造によって保温性・通気性・フィット性が変わります。

例えば「立体一層キルト」は中間の生地で厚みを持たせた構造で、布団の厚み(=マチ幅)は一般的に3~5cm程度です。寒さに応じて「二層構造」や「ハイマチ密閉構造」といった選択肢があります。
- ダイレクトキルト:通気性〇、保温性△(夏用向き)
- 立体一層キルト:通気性〇、保温性〇、標準冬用
- 二層・三層キルト:通気性×、重厚だが高保温(寒冷地向き)◎
- ハイマチ密閉キルト:通気性〇、保温性◎、高価格(プレミアム)
用途別おすすめ:
- 冬用本掛け:立体一層(マチ幅4cm)/二層・三層/ハイマチ密閉
- 春秋用合掛け:立体一層(マチ幅3cm)
- 夏用肌掛け:ダイレクト or 立体一層(マチ幅3cm)
5. 側生地素材で快適さを調整
側生地の素材によって肌触りや通気性が変わります:
- 綿100%(天然素材):吸湿性・通気性〇。蒸れにくさ重視の方におすすめ。
- ポリエステル:軽量で蓄熱性を高めた〈+2℃〉〈+5℃〉などの機能素材もあり、ただし通気性は綿に比べ△。
体質や使用環境に応じて、素材選びも重要な要素です。
羽毛布団の価格差が生まれる理由
羽毛布団の価格は、「羽毛の種類と品質」「キルト構造」「側生地の素材や縫製品質」といった仕様に大きく左右されます。各要素の特徴とコストの関係を理解することで、価格と性能のバランスを見極めやすくなります。
羽毛の種類と品質が価格を左右する
ダック・グース・マザーグースといった羽毛の種類や、ダウン率・ダウンパワーなどの数値は、保温性や耐久性に直結します。特にマザーグースや高品質ダウンは高価格帯になりやすく、加えて充填量が多いほどコストも上がります。
キルト構造と製造手間の違い
羽毛布団には立体一層・二層・三層・ハイマチ密閉構造などがあり、構造が複雑になるほど製造に時間と技術が必要です。羽毛の吹き込みや縫製工程も手間が増えるため、価格に反映されます。また、縫製工程が国内か海外かでも品質や価格に差が生じます。
側生地の素材と縫製の品質
側生地は寝心地と耐久性に直結する重要な要素です。超長綿などの高密度な綿素材や日本国内で丁寧に縫製された製品は、肌触りや通気性、耐久性に優れ、価格も高くなります。一方、ポリエステルなどの化学繊維は軽くコストは抑えられますが、通気性や吸湿性では劣る傾向があります。
“見えない”価格差の見極め方
「日本製」と表記されていても、生地の縫製が海外の場合も多くあります。実際に純粋な国内縫製の製品はごくわずかで、仕上がりの丁寧さや品質の高さは価格にも反映されます。
見分けるポイントは、「国内縫製」や「J∞QUALITY認証」などの記載があるかどうか。同一の羽毛スペックでも、日羽協のゴールドラベルとCILギャランティーラベルでは、価格差が出る場合があります。日羽協のゴールドラベルの方が高い傾向です。
羽毛布団の種類と季節に合った選び方
羽毛布団には「本掛け」「合掛け」「肌掛け」の3種類があり、それぞれ最適な季節や室温が異なります。気温の変化や体質に応じて使い分けることで、快適な睡眠環境を一年中保つことができます。
近年は、春秋の期間が短縮される「二季化」傾向が進み、従来の四季に基づいた寝具選びが通用しにくくなっています。
羽毛布団3種類の快適使用季節
以下の表は、各タイプの羽毛布団と使用に適した時期の目安です。当サイト独自の視点で、実際の気候変動や使用環境を反映しています。
羽毛布団3種の快適使用季節
季節 | 月 | 本掛け | 合掛け | 肌掛け | その他 |
---|---|---|---|---|---|
冬 | 12月 | ◎ | △ | × | × |
1月 | ◎ | △ | × | × | |
2月 | ◎ | △ | × | × | |
春 | 3月 | ◎ | ○ | × | × |
4月 | ○ | ◎ | × | × | |
5月 | △ | ◎ | △ | △ | |
夏 | 6月 | × | △ | ○ | △ |
7月 | × | × | ○ | ◎ | |
8月 | × | × | ○ | ◎ | |
秋 | 9月 | × | × | ○ | ◎ |
10月 | △ | ○ | ○ | △ | |
11月 | ○ | ◎ | × | × |
◎=最適、○=適している、△=条件により可、×=適さない
表中の「その他」は、麻・シルク・真綿など羽毛以外の肌掛け寝具を指します。
夏に羽毛肌掛け布団は本当に快適か?
かつて夏用とされてきた羽毛の肌掛け布団も、気温30℃以上・湿度の高い夜には「暑すぎる」と感じることがあります。特に汗をかきやすい方には、通気性や放湿性に優れた麻・シルクなどの天然素材がおすすめです。
下記は筆者による、真綿布団と合掛け布団の体感レビューです:

5月下旬朝の室温24℃、ダウンケットを使うか迷ったが、薄手の真綿布団を実験的に使用することにする。

10月10日夜から合掛け羽毛布団を実験的に検証、期間は少し寒さを感じた12月1日朝までの約50日間。
選び方のポイント|気温・湿度・体質で選ぶ
理想の寝室温度は、冬で16〜19℃、春秋で15〜22℃、夏は25℃以上とされていますが、実際の室温は地域や住宅性能により大きく異なります。特に寒冷地では冬の室温が5℃以下になることもあるため、季節感だけでなく実際の温湿度環境に応じた選び方が重要です。
冬・春秋・夏用の羽毛布団の特徴
冬用|本掛け羽毛布団
厳寒期に最適なタイプで、羽毛量は1,000g以上が基準。ダウンパワーに応じて量が調整され、寒冷地や冷え性の方には二層・三層・ハイマチ構造や標準より100g増量タイプが適しています。
春・秋用|合掛け羽毛布団
寒暖差の大きい季節に活躍する中厚タイプで、羽毛量600〜900gが目安。気密性の高い住まいでは、冬でも使用可能です。寒暖差に強いマザーグースダウンはおすすめの選択肢です。
夏用|肌掛け羽毛布団
羽毛量300〜400gの薄手タイプで、エアコン併用時や梅雨・初秋に便利。ただし暑がりの方や湿度に敏感な方には、麻やシルクなどの素材がより快適です。
通年使える「ツインダウン」の特徴
「肌掛け」と「合掛け」の2枚組で構成されたツインダウン(オールシーズン布団)は、季節に応じた使い分けが可能です。
- 夏:肌掛けのみ
- 春・秋:合掛けのみ
- 冬:2枚重ねて使用
ただし、2枚重ねる構造上、側生地が2重になることで重くなる傾向です。そのため羽毛量が少なく保温性は本掛けにやや劣ります。また、肌掛けの劣化により通年使用には注意が必要です。
自分に合った羽毛布団の選び方【体質・住環境別】
羽毛布団の保温性は、羽毛の種類、ダウン率、ダウンパワー、羽毛充填量、キルト構造、側生地など複数の要素で決まります。体質や住まいの断熱性能に合ったスペックを選ぶことで、冬も快適な眠りが得られます。
体質に合わせた選び方:暑がり・寒がり
暑がりの方には、放熱性・通気性を重視した軽めの布団がおすすめです。たとえば、400dp以上のグースダウン、羽毛充填量1,100~1,200g、立体1層キルト、超長綿80番手の側生地などが快適です。最低室温が5℃程度まで下がる地域では、マザーグースを使うか、充填量を1,200~1,300gにするとより安心です。
寒がりの方は、最大限の保温性が必要です。グースダウン(400dp以上)、充填量1,200~1,300g、立体2層または3層キルト、超長綿80番手の側生地が基本構成。室温が5℃以下になる環境では、マザーグースや蓄熱性のある側生地を選ぶと快適です。
最低室温を目安にした選び方
羽毛布団を選ぶうえでの大切な基準が「真冬の最低室温」です。外気温に住宅性能を加味すれば、おおよその寝室温度が把握できます。
外気温のデータは、気象庁の気温統計で確認可能です。
戸建住宅では外気温+5~6℃、高断熱住宅なら+7~8℃、中層マンションの中住戸などでは+10℃以上が目安です。また、標高100mにつき約0.6℃下がる点にも注意が必要です。
一方、高層マンションの上層階では地上より冷えることがあり、室温差が大きくなる場合もあります。
季節・室温別 羽毛布団の種類
羽毛布団は「本掛け」「合掛け」「肌掛け」の3種類があり、室温に応じて選ぶことが重要です。
室温 | 布団の種類 | スペック |
---|---|---|
25℃~ | 肌掛け・非羽毛素材 | 麻・シルク・ウールなど天然素材、300~500gの軽量タイプ |
22~25℃ | 肌掛け | 充填量0.25~0.4kg、薄手・ダイレクトキルトまたは3cm立体キルト |
15~22℃ | 合掛け | 充填量0.6~0.9kg、立体1層キルト |
10~18℃ | 本掛け | 400dp以上グース・マザーグース、充填量1.0~1.2kg、立体1層キルト |
5~10℃ | 本掛け | グース400dp以上・1.2kg、立体2層またはハイマチ マザーグース430dp以上なら1層でも対応可 |
5℃未満 | 本掛け | グース400dp以上・1.3kg、2層またはハイマチ マザーグース430dp以上・2~3層キルト推奨 |
25℃以上の高温環境での布団選び
25℃以上の室温では、羽毛ではなく通気性・放湿性に優れた天然素材の布団が快適です。
- 麻:放湿性に優れ、夏場も涼しい
- シルク:肌への刺激が少なく、エアコンとの併用にも適する
- ウール:吸放湿性に優れ、梅雨時や蒸し暑い夜にも効果的
これらの基準は、筆者の35年以上にわたる寝具販売・開発経験と使用実績に基づいています。
羽毛布団選びで後悔しないためのチェックポイント
体質(暑がり・寒がり)と冬場の最低室温を把握することで、最適な布団の種類と構造が見えてきます。
また、ネット購入と店舗購入では注意点が異なります。
- ネット通販:スペックや販売店とメーカーの信頼性をしっかり確認
- 店舗購入:手触りや質感を確認できるが、寒さは体感できない点に注意
羽毛布団の品質はダウンの種類や性能(ダウン率・ダウンパワー)によってほぼ決まります。とはいえ、これらの数値はメーカーの自主表記であり、すべてが第三者の認証を受けているわけではありません。
そのため、実績と信頼のあるメーカー選びが失敗を防ぐポイントです。
選ぶ際のひとつの目安は、グースダウン・ダウンパワー400dp以上・ダウン率93%です。これは、日羽協ゴールドラベルの上位ランクの基準(400dp・90%)を参考にしています。

羽毛布団のダウン率90と93の違いは、たった3%と僅かであるが羽毛品質においては大きな差があります。
あわせて、グースとダックの違い、羽毛の色による性能差の有無、臭いの出やすい羽毛の特徴なども知っておくと安心です。
また、「400dp=高級品」ではなく、実は標準的な基準値であることも正しく理解しておきましょう。
より詳しくは下記の解説ページをご覧ください。
さらに、キルト構造や側生地の素材も快眠に直結する要素です。立体2層キルト・ハイマチ構造は保温性を高め、超長綿(80番手以上)の側生地は通気性・保温性のバランスに優れ、肌触りも滑らかです。
最後に、ダックダウンは価格は安いものの、臭いや耐久性の面で注意が必要です。特に夏用の肌掛けでは臭いが気になりやすいため、迷った場合はグースダウンを選ぶと安心です。
羽毛布団の種類まとめ
羽毛布団には「冬用・春秋用・夏用」の3種類があり、季節や室温、体質に応じた選択が快眠につながります。
布団のランクは、羽毛の量と質、側生地の素材、そしてキルト構造によって決まります。上質な布団はこれらの要素がうまく調和しています。
これら3つのポイントを基準に、ご自宅の室温や湿度に合った羽毛布団を選びましょう。
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