マザーグースの特質と布団品質

羽毛布団ではマザーグースの羽毛は保温力と温度調節機能が高評価を得ています。その為か通常のグースとの違いは何なのか?との質問が最も多く寄せられます。

まずはマザーグースとはどのような鳥なのか、通常のグースとの違いについて説明をした後に、マザーグース羽毛布団の購入時の注意ポイントをご案内いたします。

簡単に言うと、マザーグースとグースの違いは飼育期間の差によりダウンボールの大きさと成熟度に差があります。結果としてマザーグースの方がダウン率ダウンパワーが高いため保温力と温度調節機能と耐久性に優れます。

目次

グース農場

マザーグースとは

食肉用に育てるグースの卵を産卵する親鳥のことです。マザーと言っても雌鳥だけでなく、孵化するには雄と雌の両方が必要です。雄雌の割合はポーランドのアニメックス社では雌4羽に雄1羽の割合です。

マザーグースの飼育期間は1年から4年と言われています。1年未満のグースは範疇に含まれないことになります。十分に成長した親鳥と言えます。通常のグースの飼育期間が16-18週間であるのに比べて長期間飼育されています。その為、体の大きさだけでなくダウンボールも大きくなります。

グース

グランドマザーグース

ホワイトグース

DNAの保存のため純血のグースが存在して、この鳥の卵からマザーグースは生まれます。マザーのマザーと言うべき鳥からとれたダウンは別格であり最高級ランクの羽毛布団に使用されます。たしかに食肉用に飼育しているグース農場には、ホワイトグースのはずなのに茶色い羽根が混じったグースもいます。(写真の中央の1羽)人のほくろのような存在と思います。

マザーグースと通常グースとの違い

ダウンボール

マザーグースとレギュラーグースの違いは、飼育期間が長いため羽枝が長く数も多いためダウンボールが大きく少量で保温力が確保できるところです。

通常グースとの違いは、保温力、温度変化対応域、温度調節機能、耐久性です。

温度変化対応域とは、寝室の温度変化に対応して羽毛が蓄熱・放熱する機能が働く上限と下限温度域のことです。

マザー・グースの保温力&温度変化対応域

マザー・グースと通常のグースの羽毛の保温力の違いとは、どれだけの寒さに耐えられるか断熱性の違いです。

羽毛の温度調整対応域

マザー・グースの羽毛布団であれば、室温が仮に0℃から21℃の変化に対応して寝床内温度を一定に保つとします。通常のグースの場合では、3℃から20℃の域しか対応できないと考えれば羽毛品質の一面がご理解頂けると思います。通常のグースダウンの温度調整対応域の3℃を0℃にするために100g程度を増量する羽毛布団もあります。ただし、増量すると20℃が19℃になり温度変化対応域がせまくなり使用出来る期間が短くなるのと、増量した分重くなるのと温度変化に反応する速さが遅くなります。

温度の数値に関しては説明のために仮に設定した数値です。

マザー・グースの温度調節機能

羽毛は温度調節のためダウンボールの羽枝を開閉しています。羽毛を過度に増量することは、満員電車で手足を曲げ伸ばしできないのと同様に羽枝が開閉しづらく温度調節が素早くできません。

マザー・グースとグースの耐久性

マザー・グースは飼育期間が1年以上でありグースの16-18週と比べ長いため、羽枝の本数と長さ、さらにダウンの核の成熟度が高く耐久性に優れています。また丁寧に採取されるため傷が少なく耐久性に優れます。

通常のグースダウンには、マザー・グースの手前の段階で採取されたダウンがあります。十分に親鳥に成長したグースから採取されたダウンは440dpのものもあります。このクラスのグース羽毛布団は価格がお手頃で品質が良いのでお勧めです。

マザー・グースの品質ランク

マザー・グースならば全て高級羽毛布団であるとは言えず、ダウンパワーとかダウン率の違いによりランクがあります。ランクの違いは、グースの種の違いと飼育方法、飼育環境、飼育期間、採取時期、精毛行程の違いによるものです。

マザー・グースの品質表示

羽毛布団に付いている品質表示票には、マザー・グースでも「マザー」の文字がなく「詰め物グースダウン」と表示される場合が多くあります。通常は布団の添付ラベルにて産地、色等の説明がされます。採取時期に関しては記載されていない場合があります。

マザー・グースのダウンパワー

マザー・グース羽毛は、食肉用のグースの卵を産む為に飼育されている親鳥から採取された羽毛です。しかし、厳密な品質基準は定めれていないようです。羽毛布団メーカーの考え方の違いなのか?ダウンパワー値の下限値がメーカーにより異なっています。マザー・グースと表示して販売していてもダウンパワー値を見るとレギュラーグース並の羽毛布団も見かけます。当店の基準ではダウンパワー値は430DP以上と考えています。

マザー・グース羽毛の採取時期

羽毛の採取時期により保温力に差がでます。晩秋に採取されたものは冬用のダウンです。また、冬を越した後に採取されるダウンは量も多く高品質です。ただし真冬の間は屋内での飼育のため、ホワイトダウンは少し色がくすみがちです。

羽毛の枝羽の構造は樹木に似ています。晩秋のダウンの枝羽の状態は樹木で言えば葉を沢山付けた状態です。夏に取れたダウンの枝羽は夏ばての影響からか枝も小さく弱々しい状態であり、ダウンの量も少なく品質的にもよくありません。採取時期もマザー・グースの品質に関係します。

例えば、上質の羽毛を手作業で選別した後に残った羽毛はダウンパワーも低くなっています。この残った羽毛は「マザー・グース」とは言えないと思います。あるいは夏季に採取されたダウンもランクが低いものです。羽毛布団を購入する際はダウンパワー値もチェックして下さい。

スティッキーダウンの羽毛布団

リンケージダウン,スティッキーダウン

羽毛の中でも、ダウン同士が絡む特性をもったものをスティッキーダウンとかリンケージダウンと言っています。絡むことで羽毛同士の隙間がなくなりより保温力が増します。ポーランドとかハンガリー産の最上質のスティッキーダウンは、ごく一部の限られた量しかありません。スティッキーダウンの冠をつけた低品質の羽毛布団もあるので注意して下さい。

マザー・グースの産地

ダウンの産地は、順不同にポーランド、ハンガリー、ロシア、ウクライナ、カナダ、中国などがあります。飼育場の自然環境・地理的位置による気候の違い・飼育方法により品質差がでます。同じダウン率、同じダウンパワーでも市場原理により価格差が生まれるのは品質に差があるからです。

具体的には、ポーランド産とかハンガリー産のダウンより中国産が安く取引されています。この差について大手の羽毛供給会社の説明を要約すると、ふとんの使用期間が長いことを考慮したときに違いがでるためとのことでした。

よくある質問に、ポーランド産とハンガリー産ではどちらが優れているのか?答えはどちらとも言えません。厳密にはグース種は違いますが両国とも国産事業として品種改良に取り組んでいます。この2国においては、産地国での優劣より精毛工程の違いを比べて下さい。具体的にはダウン率とかダウンパワー値の差で優劣を判断することなります。ただし、メーカーの信頼度も合わせて考慮して下さい。ポーランド産(アニメックス社)、ハンガリー産(FBZ社)は有名です。

下記の写真は、上がポーランドのマザー農場です。下の写真はポーランドのレギュラーグース農場の写真です。金網の中には入れません。

ポーランドの農場

農場内に入るには、雑菌の侵入予防に部外者はビニール袋を靴の上に履いています。

ポーランドのレギュラーグース農場

トレーサビリティ管理

2010年以降はダウンの産地に関して、トレーサビリティ管理を厳しくするメーカーが増えたように感じます。西川(株)の羽毛ふとんにおいてはトレーサビリティが明確でないダウンはMother・Gooseの表示しない様になっています。基本的に「ダウンパス」のラベルはつきません。例えダウンパワーが440dp以上であろうと飼育農場が明確でないものはレギュラーグースの扱いとのことです。

羽毛布団を購入する時の注意点

羽毛布団のラベル等に素晴らしい品質のMother・Gooseと記載されていても、中身が説明どおりであるかは寝具店でも100%確実に見分けるのは難しいものです。判断基準にメーカーの信頼度も含めていることは当店だけではないと思います。ネット通販で購入される際には注意下さい。安心なのは有名ブランドの製品です。当店ではメーカー名の記載が無いものは論外です。

鳥種鑑別混合率

鳥種鑑別混合率とは、グースダウンの中にダックなどの別の種類のダウンが混入している比率のことです。本来は100%であるべきですが混入している場合があります。

日本羽毛製品協同組合(日羽協)では許容範囲を10%未満としています。西川(株)の羽毛ふとんにおいては許容範囲を1%以下として、レギュラーグースの場合7%以下です。なぜこの様なルールが寝具業界に存在するのか?偽装の文字が浮かびます。

充填量

マザー・グースは確かに保温力に優れています。少量でも暖かいとの説明も間違いではありません。しかし、ダウンパワー値430DP-440DPのグースダウンの場合ですと、シングルの羽毛布団の場合で通常は1.2kgの充填量です。ダウン率とダウンパワーが上質のグースでない場合は、シングルの充填量を1.1kgにすることは少ないと思います。

ただし、ホワイト・コウダ種とか手選別を繰り返し行った上質ダウンは少量でも十分な場合がございます。例えば、ダウン率97%470DPのグースダウンを充填する場合などはシングルですと1.0kgで十分です。ダウンの品質に応じて適量を充填することで暖かくて軽いふとんに仕上がります。マザー・グースと表示していれば全て良い製品だと考えず、ランクがあることを前提にして十分に内容を確認して選んで下さい。

筆者:野口 英輝

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