羽毛布団選びの失敗談とその原因
羽毛布団の購入で失敗した原因は、「お買い得価格」に惹かれて安価な商品を選んでしまったことにある場合が多く見られます。
失敗と感じる主な理由としては、「寒い」「蒸れる」「臭いが強い」などの不快な症状が挙げられます。症状別に失敗談と原因をこの道35年の専門家が紹介いたします。
失敗談1羽毛布団が寒い原因と対策
通販サイトやテレビショッピングで、ふんわりと暖かそうな映像に加え、流れるような商品説明。「本日限りの特別価格!さらにカバーもセットでご提供」と、お得感を全面に打ち出したセールストークに心を動かされ、つい十分な検討もせず注文してしまいました。
しかし、届いた羽毛布団で寝てみると寒くて眠れず、結局毛布を重ねて眠ることに……。
羽毛布団が寒い主な原因は、使用環境の最低室温に対して保温力が不足しているためです。特に、充填されている羽毛自体の品質や量が十分でない場合、十分な暖かさを得られません。

羽毛布団の暖かさレベル診断!羽毛の種類とダウン率、ダウンパワー、充填量、キルトで暖かさがわかる
また、布団のサイズが体格に合っておらず、足がはみ出してしまう、あるいは寝返りを打つたびに背中に隙間ができて寒く感じる!といった体験談も少なくありません。
購入当初はボリュームがあり十分に暖かかったものの、3ヶ月も使うとボリュームがすっかり減ってしまい、寒くて眠れなくなったという声もあります。
このような現象の原因は、ダウンを薬品処理によって一時的に膨らませる「パワーアップ加工」が施されていることにあると考えられます。一度しぼんでしまった羽毛は、元に戻すことは残念ながらできません。
失敗談2羽毛布団が蒸れる原因と対策
「布団が暖かすぎて寝汗をかき、蒸れて眠れない!」そんな声も少なくありません。
まず前提として、羽毛布団に限らず、どの寝具でも熱が発生する際には「凝縮熱」によって湿気が生じることをご理解ください。
羽毛布団が蒸れてしまう原因はいくつか考えられます。
ひとつは、室温に対して過剰な保温力をもつ羽毛が充填されているケースです。特に、寒冷地仕様など高い保温性をもつ布団を高気密高断熱マンション等の温暖な環境で使用すると、寝ている間に暑くなりすぎてしまうことがあります。
もう一つの原因は、2層・3層構造など蓄熱性を優先した布団設計にあります。これにより熱がこもりやすくなり、結果的に蒸れやすくなるのです。
さらに、側生地に吸湿・放湿性の低いポリエステル系素材を使用している場合も、湿気が逃げにくく蒸れの原因となります。
失敗談3羽毛布団が臭う原因と見分け方のコツ
「羽毛布団を開封した途端、鳥特有の強い臭いがして驚いた」そんな声をよく耳にします。干しても臭いはほとんど軽減されず、洗っても消えなかったという失敗談も少なくありません。
羽毛の臭いの主な原因は、若鳥から採取された未成熟なダウンに多く含まれる油脂分です。特に、低ダウン率のダックダウンではこの問題が頻繁に発生します。
洗浄不足の可能性も考えられますが、たとえ十分に洗浄されていても、油脂分はダウンの内部に存在しているため、完全には除去できず、においが残ってしまうのです。
夏日の羽毛布団の輸送は、高級な羽毛布団においても商品到着時に羽毛の臭いが強く感じられる場合があります。この場合は布団をケースから出してエアコンで熱を冷ますことで臭いは柔ら来ます。
こうした失敗を防ぐには、正しい知識をもとに選ぶことが重要です。羽毛布団選びの基本から専門的な視点まで知りたい方は、ぜひこちらの「羽毛布団の選び方」ページもご覧ください。
専門店が教える!羽毛布団購入で失敗しないためのポイント
羽毛布団を選ぶ際に、専門店が重視している10+1の指標を以下の表にまとめました。
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メーカーの信頼度がすべての基盤です |
これらの指標を組み合わせて検討することで、ご自身の睡眠環境に最適な、バランスの取れた羽毛布団を選ぶことができます。
とはいえ、ダウン率やダウンパワーといった専門用語を突然並べられても、何のことかわからないという方も多いでしょう。
ここでお伝えしたいのは、これら10の指標はすべて、最終的には「メーカーの信頼度」に基づいて判断されるという点です。
羽毛布団の品質指標である専門用語について簡単に説明を致します。
品質指標である専門用語の意味を知る
11の指標について簡単に説明を致します。
- 羽毛の種類:グースやダックなど、水鳥の種類によって保温性や価格が異なります。グースとダックの違いを知ることは重要!
- ダウン率:ダウンと小さな羽根を含む羽毛全体においてダウンの割合。一般に90%以上であれば上質とされます。
- ダウンパワー:羽毛のかさ高性を示す数値で、数値が高いほど保温力が高いです。
- 羽毛充填量:布団に詰められた羽毛の重量を指します。ダウンパワーが低い場合は、保温性を補うために羽毛の量が増え、布団が重くなる傾向があります。
- 羽毛の産地ポーランドやハンガリーなど、寒冷地産の羽毛は特に高品質とされています。
- 側生地素材の種類:綿やポリエステルなど。綿100%は肌触りが良く、吸湿性にも優れています。ただし綿の生地にもランクはある。
- キルトの種類:布団の内部構造によって保温性やフィット感が変わります。立体1層キルトが一般的です。
- 日本製:側生地を海外縫製して国内で羽毛を充填後吹き込み口を縫製した日本製が90%以上。
- 羽毛布団の種類・タイプ:冬用・合掛け・肌掛けなどのタイプがあり、羽毛の充填量や保温力もそれぞれ異なります。季節や使用目的に合わせて最適なタイプを選ぶことが大切です。
- 羽毛布団のサイズ:幅はシングルからキングサイズまで、丈は最大230cmと長いものもあります。ご自身の体格に合わせて最適なサイズを選びましょう。
- メーカーの信頼度:日本羽毛製品協同組合(日羽協)への加盟の有無、実績、取り扱い販売店の数、保証体制などを確認することが大切です。
上記の指標の説明において「日本製」の項以外は、他のサイトでも説明されていると思います。ただこれらの指標には「欠点」や「誤解を招きやすいポイント」がありこの事実を知った上で指標を正しく読み取る必要があります。
特にダウン率・ダウンパワー・羽毛充填量といった数値は、一定の目安にはなりますが、実際の暖かさや快適性を完全に示すものではありません。また、メーカーによって表示の基準や表現が異なることもあり、数値だけを鵜呑みにすると本質を見誤る可能性もあります。
これらの指標を正しく読み解くためには、指標の真相を理解すること、そして何より「信頼できるメーカーかどうか」を見極める視点が不可欠です。専門店が日本製に注目するのも、その透明性と品質管理の確かさに理由があります。
プロがが教える羽毛布団の指標の本当の見方
以下は、羽毛布団を選ぶ際によく使われる指標について、専門家の視点から見た「欠点」や「誤解を招きやすいポイント」のリストです。あくまで消費者に誤認を与えやすい点を整理したものであり、指標そのものの有効性を否定するものではありません。
- 羽毛の種類:「ダック < グース < マザーグース」の順に暖かいという説明は概ね正しいものの、ダックとグースの羽毛は構造上大きく異なるため、ダウンパワーによる単純な比較はできません。詳しくは「ダックとグースの違い」のページをご覧ください。また、マザーグースはメーカーにより基準が異なります。
- ダウン率:ダウンには未成熟なものや破損したものも含まれるため、数値が高くても必ずしも高い保温性を示すとは限らず、目安としては不完全な面があります。
- ダウンパワー:測定初期では同じ数値でも、使用を重ねるうちに回復力に差が生じることがあります。また、ダックダウンは保温性のわりに数値が高く出やすい傾向があります。
- 羽毛充填量:充填量が多ければ多いほど暖かいと誤解されがちですが、実際には100g程度の増量であれば保温性向上に有効であり、それ以上はフィット感が損なわれたり、重く感じることがあります。
- 羽毛の産地:ポーランドやハンガリーなど寒冷地の羽毛は高品質とされますが、特に湿度などの飼育環境の違いが耐久性に影響を及ぼす傾向があります。
- 側生地素材の種類:綿製の側生地には糸番手や織り方の違いがあり、柔らかさ・軽さ・通気性(蒸れにくさ)に差が出ます。
- キルトの種類:立体1層キルト、2層・3層キルト、ハイマチ完全立体キルトなどがあり、それぞれ保温性・快適性・重量・耐久性が異なります。
- 日本製:「日本製」との表記でも、すべて国内で製造された純日本製とは限らず誤解を招く場合があります。国産生地・国内縫製・国内充填かどうか、また「J∞QUALITY」認証マークの有無を確認することが重要です。
- 羽毛布団の種類・タイプ:たとえば西川株式会社では、シングルサイズで羽毛充填量が1kg未満のものは「羽毛ふとん」とは呼んでいません。充填量は保温力と密接に関わる重要な要素です。
- 羽毛布団のサイズ: 「シングルサイズが210cmだから、身長180cmなら30cmの余裕がある」と誤解されがちですが、実際には足のサイズ(足の高さ)や寝返りの余白分も考慮して、余裕を持った長さを選ぶ必要があります。
- メーカーの信頼度:「西川製だから高級品」という認識は正確ではありません。老舗ブランドでも製品ごとに品質差があります。また、過去には偽装問題により日本羽毛製品協同組合(日羽協)を退会したメーカーも存在します。販売元ではなくメーカー(羽毛充填会社)の確認は必須です。
このように、各指標には「見かけの数字ではわからない落とし穴」が存在します。専門店では、これらの数値を鵜呑みにせず、総合的な視点でご提案しています。
羽毛布団は価格よりまず品質で選ぶ
羽毛布団の「らしさ」【つまり、軽くて暖かく、ひなたぼっこのような温もりに包まれる快適さ】をしっかり感じられるかどうかは、羽毛の品質ランクによって大きく左右されます。
この道35年の専門家として申し上げるなら、日本羽毛製品協同組合(日羽協)のラベルでは、ロイヤルゴールドラベル以上であれば、羽毛布団本来の心地よさを十分に感じていただける品質といえます。
シングルサイズにおける羽毛品質の目安
- グースダウン:ダウン率93%・ダウンパワー400dp・充填量1.3kg
- ダックダウン:ダウン率93%・ダウンパワー420dp・充填量1.4kg
羽毛布団の品質評価における「400dp」の本当の意味
最近、「400dp以上なら高級」「350〜390dpは標準」といった説明を見かけることがあります。しかし、この道35年の専門家として申し上げるなら、この基準には疑問を感じざるを得ません。
実際には、グースダウンの400dpは“標準的な品質”であり、これを「高級」とする表現は過大です。グース400dpは、羽毛布団として快適さを感じられる“基準点”ではありますが、それ以上でなければ高級とは言いがたいのが実情です。
こうした誤解を生む説明は、低価格帯の羽毛布団を“高級”と見せかけて販売するための方便である可能性が高く、購入者にとっては正確な判断を妨げる要因になりかねません。
羽毛布団を選ぶ際は、単なる数値だけでなく、その羽毛の種類や復元性、製造背景まで含めて、本質的な品質を見極めることが何よりも大切です。
側生地とキルト構造の選び方
- 側生地:60番手以上の超長綿がおすすめ。可能であれば国産生地を選ぶと安心です。
- キルト構造:標準は立体1層キルト。寒がりの方や寒冷地の場合は2層キルトまたはハイマチキルトが快適です。
日本製羽毛布団の選び方
市場に流通する羽毛布団の90%以上は、海外で側生地を縫製し、国内で羽毛を充填・吹き込み口を縫製して仕上げた「日本製」です。
このような製品を選んだからといって「大失敗」とまでは言いませんが、“日本製”という言葉の裏側を知ると、少しがっかりする方もいるかもしれません。
純日本製の羽毛布団を選びたい場合は、「国産生地・国内縫製」と明記された製品、または低価格帯の製品にはあまり見られませんが、「J∞QUALITY」認証マークが付いたものを目安にすると安心です。
信頼できるメーカー製の羽毛布団
老舗メーカーである西川株式会社は確かに知名度が高く、多くの方に支持されていますが、実際には上記の基準をすべて満たさない製品も製造しています。
有名だからといって必ずしも「失敗しない」とは限りませんが、表示内容と実際の品質との乖離が少ないという点では、比較的安心できるメーカーといえるでしょう。
羽毛布団を選ぶうえでメーカーの信頼性を見極める基準としては、経済産業省の認可団体である「日本羽毛製品協同組合(日羽協)」への加盟の有無が最も有効だと考えます。
なぜなら日羽協では、市場に流通する羽毛布団を試買調査し、表示内容と現物の品質が一致しているかどうかを検査しており、不一致があれば注意喚起や除名処分といった厳格な対応が行われているからです。
以上が、羽毛布団の品質ランクを正しく理解し、後悔しない選び方の基本です。
ただし、実際にご自身に合った羽毛布団の種類やタイプを見極めるには、さらに具体的な視点が必要です。
それについては、次の章で詳しくご案内いたします。
自分に合う羽毛布団のタイプ
最適な羽毛布団を選ぶには、まずご自身の寝室環境──特に真冬の最低室温──を把握することが大切です。
さらに、体質(暑がり・寒がり)や体格も考慮しましょう。
室温の目安に応じた羽毛布団の選び方は以下の通りです:
- 室温5℃前後:高品質の羽毛に加え、2層キルトまたはハイマチキルト仕様の羽毛布団がおすすめ。
- 室温10℃前後:基準品質の羽毛+立体1層キルト仕様で十分です。
- 室温15℃以上:冬用ではなく、合掛け羽毛布団で快適に過ごせます。
寒がりの方は、実際の室温よりも一段階低い温度帯に対応する羽毛布団を選ぶと快適です。
また、布団のサイズは、現在お使いの掛け布団を基準に、ご自身の体格や寝具環境に合わせて選んでください。
まとめ|後悔しない羽毛布団選びのために
羽毛布団は決して安い買い物ではありません。だからこそ、価格や宣伝文句だけで選ばず、正しい知識と信頼できる情報に基づいて選ぶことが大切です。
今回ご紹介した「ダウン率」や「ダウンパワー」「充填量」などの指標は、品質を判断するうえで欠かせないものですが、それぞれに誤解されやすいポイントや欠点もあります。重要なのは、それらの数値だけでなく、羽毛の種類・産地・キルト構造・側生地・メーカーの信頼度など、多角的に比較・検討することです。
また、「ひなたぼっこのようなぬくもり」と感じられる羽毛布団の快適さは、ロイヤルゴールドラベル以上の品質にこそ宿ります。寝室環境やご自身の体質に合ったタイプを選ぶことも、快適な睡眠の鍵となります。
専門店としての長年の経験をもとに申し上げるなら、「見た目や価格ではなく、本当に心地よく眠れるか」を軸に羽毛布団を選ぶことこそが、後悔しない最良の選択です。
最後に、選んだ羽毛布団が正しく選べているかを確認するための、購入前チェックリストをご紹介します。

購入時にチェックするポイントをリスト化いたしました。勘違いしそうなポイントを紹介致します。
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