ダウン1kgの羽毛布団は寒い?

「羽毛の充填量が1kgの羽毛布団は寒いのでは?」と疑問に感じる方は多くいます。老舗専門店の回答は、『Yes and No』です。たしかに、羽毛1kgで「寒い」と感じる布団は存在します。しかし一方で、軽くても非常に暖かい羽毛布団もあります。

羽毛布団の暖かさを左右する主な要素は、羽毛の品質充填量の2つです。同じ1kgでも、使用されている羽毛の質によって体感温度は大きく変わります。つまり、「寒い」と感じる羽毛布団の多くは、羽毛の品質が十分でないことが原因なのです。羽毛の充填量は羽毛品質に応じて適量があります。

羽毛品質と保温力の関係

羽毛の保温力は、その品質を判断する上で重要な指標の一つであり、主に羽毛の種類(一般的にはダックよりグース、さらにその上のマザーグースが高品質とされます)、ダウン率、およびダウンパワーによって左右されます。

ダウン率とは、羽毛の中に含まれるダウンボール(未成熟のものや破損・繊維化したものも含む)と小羽根(フェザー)の割合において、ダウンボールが占める比率を示すものです。この比率が高いほど、羽毛の品質は高いと評価されます。

一方で、ダウンパワーは、羽毛がどれだけふくらみ、空気を含むかを示す指標で、布団の中を想定した環境下で測定されます。1gあたりの体積をdp(ダウンパワー)という単位で表し、この数値が高いほど、保温性に優れた高品質な羽毛であることを意味します。

また、鳥の種類によってダウンの構造大きさが異なるため、保温力にも違いが生じます。一般的には、ダックグースマザーグースの順にダウンボールが大きくなり、それに伴って保温性も向上します。

中でもダックダウンは、羽枝の軸が太く弾力性があるため、保温力のわりにふくらみやすいという特性があります。構造的な特徴としては、中央部の小羽枝が少なく、先端に集中する傾向がある点が挙げられます(下図参照)。このことも保温力が低い理由になっています。

羽毛の種類と保温力の違いを構造の違いと共に示したイメージ図

羽毛の保温力と羽毛布団の保温力は異なります。

まず、「羽毛の保温力」とは、ダウンが持つ熱を保持する能力のことを指します。これは主に、ダウンの水鳥の種類、ダウン率、ダウンパワーによって決まります。

一方で、「羽毛布団の保温力」は、羽毛そのものの保温力に加えて、羽毛の充填量や布団内部の仕切り方(キルト構造)、さらには側生地の素材や蓄熱機能といった布団全体の仕様や素材が大きく影響します。つまり、同じ羽毛でも、充填量、キルト構造、側生地素材次第で暖かさが大きく変わるのです。

このため、羽毛の品質だけでなく、布団全体の仕様にも注目することが、快適な暖かさを得るためには重要です。

羽毛充填量1kgの羽毛布団の保温力

寝床内の理想的な温度は、一般的に32〜34℃とされています。この快適な温度を、羽毛の充填量が1kgの布団で実現するには、私の35年の経験から言っても、ダウンパワーは最低でも450dp以上が必要です。できることなら、それ以上の数値を持つ羽毛を選ぶのが理想的です。

羽毛の保温力をシンプルに比較する方法のひとつが、ダウンパワー(dp)による体積の違いです。たとえば、充填量が1kg(1000g)の羽毛布団を例にすると、380dpの羽毛では体積が380リットル、一方で480dpになると480リットルに達します。つまり、その差は100リットルにもなります。

この100リットルの羽毛が自然に膨らんだ状態で換算すると、一般的な家庭用のバスタブ1杯分に相当するほどの違いがあります。これは、羽毛の品質によって得られる暖かさや快適さがいかに大きく変わるかを示す、非常にわかりやすい指標と言えるでしょう。

400dpのグースダウンを使用したシングルサイズの羽毛布団では、充填量1.2kgが標準とされています。これに対して1.0kgの布団では、200gの差があり、これはダウンジャケット1枚分に相当する保温力の違いを生み出します。やや極端な表現かもしれませんが、ジャケットを1枚着ているかどうかほどの体感差があると言えるでしょう。

西川株式会社の品質基準においては、シングルサイズで羽毛充填量が1kg未満の布団は「羽毛ふとん」とは分類されず、冬用の羽毛ふとんほど強い保温力が不要な「羽毛合い掛けふとん」や「羽毛肌掛けふとん(ダウンケット)」と明確に区別されています。このことからも、羽毛充填量1kgが、保温力に大きな差が生じる分岐点であると言えるのではないでしょうか。

羽毛布団の暖かさのレベルを知るには下記のサイトをご覧下さい。

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充填量1kgの羽毛布団は寒いのか? その答えとは

羽毛布団の充填量が1kgで寒いかどうか——この問いに対する答えは、一概には言えず『Yes and No』です。というのも、同じ品質の羽毛布団であっても、合い掛け羽毛布団でも快適な室温が15℃以上の環境と15℃未満の環境では、体感温度に大きな差が生じるためです。

加えて、住環境も重要な要素です高断熱・高気密のマンションでは室温が安定しやすいため、1kgの羽毛布団でも快適に過ごせることが多い一方で、断熱性が低い建物や古い住宅では、同じ布団でも寒さを感じやすくなります。

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さらに、季節の違いも無視できません。秋や春の比較的温暖な時期であれば、1kgの羽毛布団でも十分な保温力を発揮しますが、真冬の寒冷地では寒く感じるでしょう。また、暑がりか寒がりかといった体質の違いによっても、快適さの感じ方には個人差があります。

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羽毛1kgの羽毛布団は寒いか?YES

とはいえ、一般的な戸建て住宅の寝室で、最も寒さが厳しい1月〜2月の時期を想定した場合、平均的な体質の方にとって、充填量1kgの羽毛布団は寒く感じることが多いと考えられます。このケースでは、答えは「Yes」が多数派と言えるでしょう。

以下は、実際に販売されている可能性が高い製品の広告例です。写真には「暖か軽量羽毛布団」というキャッチコピーが掲げられていますが、表示されている羽毛の品質から判断すると、この布団では、冬の一般的な戸建て住宅の寝室では間違いなく「寒い」と感じることでしょう。

暖か軽量羽毛布団(サンプル)

暖か軽量羽毛布団・ダックダウン1kg充填

架空の製品です。
メーカー:○○○(株)/サイズ:150cm×210cm  シングルキルティング製(許容範囲 +5% -3%)/色:掲載写真/ダウン:ダックダウン・ホワイト(産地:○○○国/ダウンパワー:380DP/ダウン率:85%/羽毛量:1.0kg(SL)/洗浄度:500mm/側生地:軽量ポリエステル/キルト:立体1層キルト・充填・縫製は国内/8ヶ所カバー留め付き/収納ケース:収納に便利なソフトケース/生産国:日本

羽毛布団が寒い原因

この仕様では、品質面において一般的な戸建て住宅の真冬の環境下では保温力が不足しています。
そのため、このレベルの羽毛品質で快適に過ごすには、少なくとも1.5kg程度の羽毛充填量が必要とされます。

買い替え時におすすめする羽毛品質

この道35年の専門家が推奨する、室温5〜10度の冬用羽毛布団に求められる保温力は、グースダウンの場合、以下の計算式で求められます。
ダウン率 × ダウンパワー × 充填量
具体的には、93% × 400dp × 1.2kg = 約44,640の保温力が下限の目安です。

一方、ダックダウンは羽毛構造の特性により、実際の保温力に比べてダウンパワーが高めに表示される傾向があります。
そのため、計算の際は表示されているダウンパワーから、少なくとも20dpを差し引いて評価してください。
たとえば、ダウン率93%・400dpのダックダウンを使用する場合、充填量は1.3kg程度が理想と考えられます。
(なお、原毛の価格にはグースとダックでさらに大きな差があります。)

羽毛布団の購入で失敗しないためには、一般的な戸建て住宅の場合、羽毛の品質はロイヤルゴールドラベル相当(ダウン率90%・ダウンパワー400dp以上)を基準とし、さらに充填量は羽毛の種類に応じて、グースなら1.2kg以上、ダックなら1.3kg以上を目安に選ぶことをおすすめします。
高断熱のマンションにお住まいの方や暑がりの方は、保温力がやや低めの仕様をご検討ください。
また、ムレ感の軽減を図るため、可能であれば60番手以上の超長綿の側生地を使用したものをあわせておすすめします。
詳しくは、以下のサイトをご覧ください。

激安羽毛布団のコスパ

激安羽毛布団の品質とコスパの良い布団を選ぶための基準や注意点を専門店が解説。

羽毛1kgの羽毛布団が寒いときの対策

  • 寒さの原因が羽毛の湿気や汚れの場合は、干したりクリーニングで改善する場合があります。
  • 布団の上に掛け毛布を重ねて、保温力を高める
  • ダウンケット・真綿肌布団・インナーケットを布団の内側に使用して暖かさをプラスする
  • ベロア生地など保温性の高い掛けカバーを使用する
  • パジャマや敷き寝具の素材を見直し、保温性をアップさせる

羽毛1kgの羽毛布団は寒いか?NO暖かい

当店で取り扱っているような、ダウンパワー480dp・ダウン率98%のマザーグースダウンを1kg充填した高品質な羽毛布団であれば、「軽くて暖かい」という理想的な寝心地を実現できます。このような品質であれば、ご質問の答えは「No」となります。

下記の羽毛布団の仕様であれば、室温が約5℃程度までであれば、特に寒がりでない方であればご使用いただけるでしょう。ただし、室温が5℃前後まで下がる環境では、敷き寝具やパジャマなども、それに見合った保温性の高いものをご使用いただくことをおすすめします。この羽毛布団は軽さを主に企画した製品です。

超軽量暖か480dp羽毛布団

暖かさと充填量の目安

羽毛布団の暖かさはキルト構造にも左右されますが、主に羽毛の品質と充填量に大きく依存します。そこで、羽毛の種類ごとに暖かさの目安となるシングルサイズの充填量を、以下の表にまとめました。

羽毛の種類 充填量(SL)ダブルは1.4倍
ダック90%・400dp未満 1.4~1.5kg(シングル)
ダック93%・400dp以上 1.3~1.4kg、400dp以上のダックは稀
グース90%・400dp未満 1.3kg、90%400dpのグースは稀
グース93%・400dp 1.2kg or 1.3kg室温と体質に応じて
グース93%・430dp以上 1.2kg
マザーダック95%・440dp以上 1.2kg、グース93%・430dp1.2kgが暖かい
マザーグース95%・440dp以上 1.1kg or 1.2kg
マザーグース95%・450dp以上 1.0kg or 1.1kg

充填量は、品質表示表に「詰めもの重量」として記載されています。

ダウンパワーを確認する方法は、添付されているラベルを見るか、日本羽毛製品協同組合(日羽協)加盟社であれば4種類のゴールドラベルによって確認できます。

なお、西川株式会社の羽毛布団にはダウンパワーの表示がない製品もありますが、下記のサイトをご参照いただくことで、おおよその数値を把握することが可能です。

西川羽毛布団の選び方
西川羽毛布団の選び方

羽毛布団の選び方西川編!ゴールドラベルとダウンパワー表示が無くてもランクが解る!

寝室の最低温度や個人の体質によって、必要とされる保温力は異なります。

羽毛の種類や品質、充填量に加え、体にフィットし易い柔らかな側生地、保温性に優れた二層・三層キルトやハイマチキルトなども考慮し、ご自身に最適な羽毛布団をお選びください。

羽毛布団選び方ラベル
羽毛布団の選び方

最適な羽毛布団を選ぶには、品質指標の基礎知識に加え、商品説明文の行間を読み解く専門家の知見が不可欠。

まとめ

充填量が1kgの羽毛布団が寒く感じる主な原因は、使用されている羽毛の保温力が十分でないことにあります。つまり、単に充填量だけでなく、羽毛の品質が暖かさに大きく影響するのです。

同じダウンパワーであれば、暖かさを確保するには充填量を増やす必要があります。たとえば、ロイヤルゴールドラベル相当(ダウン率90%・ダウンパワー400dp以上)のダックダウンなら、1.4kg程度が理想です。グースダウンであれば、保温性が高いため、1.2kg程度で十分な暖かさが得られます。

コストパフォーマンスの良い羽毛布団を選ぶには、以下のポイントを目安にすると良いでしょう。

  • 羽毛:グースダウン使用
  • ダウン率:93%以上
  • ダウンパワー:400dp以上
  • 充填量:1.2〜1.3kg
  • 側生地:60番手〜80番手の超長綿
  • キルト構造:立体一層キルト

なお、価格を抑えたい場合は、「国産生地」や「国内縫製」にこだわらず、上記の品質基準を優先するのがおすすめです。また、暑がりの体質の方には羽毛充填量を抑えた立体1層キルトタイプがおすすめです。

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