プロの羽毛布団の選び方とは

羽毛布団を選ぶ際、価格や品質の違いに迷うことがよくあります。実は、羽毛布団の暖かさ軽さ快適性といった魅力は、羽毛側生地キルト構造(内部仕切り)が生むハーモニーのようなものです。

羽毛布団選び:数字の裏にある「本当の品質」を見極める

羽毛布団を選ぶ際、カタログに記載されている羽毛品質の指標である「ダウンパワー」の数値「ダウン率」の高さ「キルト構造」の種類といった表示を目にすることが多いでしょう。これらは確かに品質の目安にはなりますが、実はカタログの数字や情報だけでは、その羽毛布団の「本当の品質」すべてを語ることはできません。

例えば、同じダウンパワーでも羽毛の種類で暖かさが異なったり、肌触りの良い生地でも実はクリーニングの可否や耐久性に課題があることも。

後悔しない羽毛布団選びには、これらの指標の「表面」だけでなく、その「裏側」に潜む欠点まで見抜く専門的な視点が不可欠です。当サイトでは長年の経験に基づき、数字だけでは分からない羽毛布団の真価を見極め、お客様一人ひとりに最適な一枚を見つけるお手伝いをします。

目次 お急ぎなら羽毛布団の暖かさ即診断

羽毛布団の品質表示票の行間を読む選び方

羽毛の選び方:種類と暖かさの秘密

羽毛布団の暖かさの核となる「羽毛」について、その構造から種類、見分け方まで詳しく解説します。

羽毛の基本と保温の仕組み

ダウンボールの画像

羽毛は、中心の核から放射状に広がる「羽枝」と、さらに細かい「小羽枝」で構成され、ボール状の形から「ダウンボール」と呼ばれます。このダウンボールが暖かい空気を抱え込むことで、優れた保温性を発揮します。一般的に「ダウン」や「羽毛」と呼ばれますが、「羽毛」には小さな羽根(スモールフェザー)が含まれることもあります。

ダウンの構造と蓄熱の仕組み

ダウンボールは温度に応じて羽枝の開き具合を調整し、寒い時は密にして熱を閉じ込め、暖かい時は広げて熱を逃がします。これにより、布団の中を快適な温度に保ちます。大きく羽枝が密生したダウンほど、より多くの熱を蓄えられ、優れた暖かさと快適性を生み出します。

ダウンボールの構造と蓄熱の仕組み

羽毛の種類と暖かさの比較:ダック、グース、マザーグース

羽毛布団の暖かさを決める最も重要な要素の一つが、羽毛が採取される水鳥の種類です。主にダック、グース、マザーグースの3種類があります。

ダック、グース、マザーグースの水鳥の体格比較

下の図は、これら3種類のダウンボールの断面をイメージしたものです。

ダック、グース、マザーグースのダウンボール断面図と熱を蓄える量の比較

羽毛のサイズは、ダック → グース → マザーグースの順に大きくなり、羽枝も長く密度が高まります。これにより、保温性・温度調節機能・耐久性が向上し、品質も高まります。特にマザーグースは羽毛の核が成熟しているため、より丈夫で耐久性に優れています。

私たちがおすすめするダウンの種類は、グースかマザーグースです。

水鳥の種類の確認方法

ダックかグースかは品質表示票に記載されます。マザーグースは「グース」と表記され、別途添付ラベルで産地とともに示される場合が多いです。

ダウン率とは

羽毛の内訳におけるダウンとフェザーの写真

羽毛は保温性に優れたダウンと、小さな羽根(フェザー)で構成されており、ダウンの割合を示すのが「ダウン率」です。保温性や温度調節機能はダウンボールの働きによるため、ダウン率が高い羽毛布団ほど高品質とされます。90%以上、理想的には93%以上を推奨しますダウン率90%と93%の違い)。さらに、ダウン率が高いほど耐久性も向上します。

ダウン率の確認方法

ダウン率は品質表示票の「詰めもの」欄に「ダウン95%、フェザー5%」のように記載されます。

ダウンパワーとは

ダウンパワーの測定とふくらみの図

ダウンパワー(dp)とは、羽毛1gあたりのふくらみ(かさ高)を数値化した指標で、この値が高いほど温もった空気を多く含み、軽くて暖かい羽毛布団になります。冬用としては、マザーグースは430dp以上、グースは400dp以上、ダックは420dp以上が冬用羽毛布団では推奨品質です。保温力や快適さ、耐久性を見極めるうえで重要な指標です。

日羽協が定める基準では、400dpが「標準的な羽毛品質」とされています。

詳しい測定方法はこちらをご覧ください。

ダウンパワーと暖かさの関係

下の図は、同じ重さの羽毛を透明な容器に入れて、dp値によるふくらみの違いを比べたものです。dpが高いほどたくさん空気を含み、熱を逃しにくくなります。

ダウンパワーの違いでふくらみに差が出る実験

たとえば400dpと390dpの10dp差でも、羽毛1200gの布団では1200倍の差になり、暖かさに大きく影響します。筆者の体感では、300dpを基準に「400dp→100dp」と「390dp→90dp」と捉えると明確に違いを感じ取れます。

ダウンパワーと快適温度の目安

当店の体感では、10dp上がるごとに約1℃弱(おおよそ0.8℃)保温力がアップします。例えば、羽毛1.2kg充填のダウンパワー400dpの羽毛布団で快適に眠れる室温が約8℃だとすると、440dpなら5℃でも暖かく使えます。

また、羽毛を100g増やすと、使える室温が約1~2℃下がります。ただし、ダックはこの効果が半分程度と考えてください。

羽毛の種類dp値快適使用温度充填量
ダックダウン380室温8~10℃以上1.5kg
グースダウン400室温7℃以上1.3kg
マザーグース440室温5℃以上1.2kg

※表のグース(400dp)の充填量1.3kgは、快適室温約7℃に対応するため100g増量した目安です。
※本掛けシングルの場合。キルトや側生地の違いで体感は変わります。
※筆者およびユーザーの使用実感に基づきます(快適上限:室温18℃程度)。

下図は、羽毛の種類ごとの快適使用温度帯をグラフ化したものです。

羽毛の種類ごとの快適使用温度帯のグラフ

このように、ダックからマザーグースにかけて、dp値が上がるごとに使用できる室温が下がり、より寒い環境でも快適に眠れるようになります。

dp別 羽毛布団の使い分け

  • 400dp未満:合掛けや肌掛け向き。冬用なら室温10℃以上。
  • 400dp以上:標準的な冬用。室温5~10℃に対応。
  • 440dp以上:寒がり・寒冷地向け。室温5℃以下でも対応。
  • 450dp以上:軽くて高品質な羽毛布団に。

ダウンパワーの確認方法

dp値は品質表示に書かれていないため、添付ラベルで確認します。また、日羽協のゴールドラベルも参考になります。

ダウンパワー値が書かれたラベル

ゴールドラベルの種類

日羽協では、ダウンパワー400dp・ダウン率90%を基準に、4等級(クラス)を上位ランク(プレミアム・ロイヤル)下位ランク(エクセル・ニュー)に分類しています。

日羽協ゴールドラベル4ランクの比較
ラベルダウン率ダウンパワー羽毛種類評価
プレミアムゴールド
プレミアムゴールド
93%~440dp~マザーグース
グース
マザーダック
★★★
★★★
ロイヤルゴールド
ロイヤルゴールド
90%~400dp~グース
ダック
★★★
★★
▲ 上位・下位の分岐基準(400dp・90%) ▼
エクセルゴールド
エクセルゴールド
80%~350dp~ダック
グース
★★★
ニューゴールド
ニューゴールド
50%~300dp~ダック★★★

評価の★の数はゴールドラベル裏面に記載されています。

一般には、400dpを超えるほど少しずつ良質とされ、440dp以上で高品質、460dp以上で最上級と評価されます。

おすすめは、プレミアムゴールドロイヤルゴールドです。

羽毛の保温力と充填量の適切な関係

羽毛布団の適切な羽毛充填量は、ダウンパワー、ダウン率、鳥種によって異なります。また、季節や室温に応じて、以下の3種類が選べます。

  • 冬用羽毛布団
  • 合い掛け布団(秋春用):充填量は冬用の50~60%
  • 肌掛け布団(夏用):充填量は冬用の25~30%

冬用羽毛布団の充填量の目安

充填量はダウンの品質や鳥種によって異なります。選び方の基準は以下の通りです。

  • 90%・400dp未満:1.4~1.5kg(シングル)
  • 90%・400dp以上:1.2~1.3kg
  • 93%・430dp以上:1.2kg
  • 95%・450dp以上:1.0~1.1kg

ダウンパワーが低い場合は充填量を増やして保温性を補う傾向がありますが、軽さと暖かさを両立するには、充填量が少なくても暖かい高品質な羽毛を選ぶことが重要です。ダブルサイズはシングルの約1.4倍が目安です。

羽毛充填量の確認方法

充填量は品質表示票の「詰めもの重量」に記載されています。購入時にダウンパワーに見合った適量かを確認しましょう。

詳しくは「羽毛布団の重さとダウン品質」を参照ください。

羽毛の産地と品質ランク:表示の裏側を見抜く

羽毛の産地は、一般的にポーランド、ハンガリー、ドイツ、ロシア、カナダ、ウクライナ、フランス、イギリス、中国の順に評価が高いとされています。特にポーランドとハンガリーは高品質で知られていますが、産地ごとの差はあくまで目安であり、個々の羽毛品質を詳細に確認することが重要です。

ダウンベルトとされる地域

北緯45~53度の「ダウンベルト」地域は、寒冷で乾燥した気候により高品質な羽毛の産地とされています。

羽毛布団を選ぶ際は、トレーサビリティの観点からも産地の国名を確認することが重要です。産地は国名ではなく、マズルカ(ポーランド)、ジーリン(中国吉林省)など地域名で表示されることもあります。

羽毛の産地を確認する方法

産地は添付ラベルで確認できます。

羽毛布団の産地・鳥種を記載したラベル

最近では、J-TAS(羽毛産地認証)ラベルが添付されている場合もあり、このラベルが付いている羽毛は産地が明確で信頼性が高いといえます。ただし、この表示を取得することで価格がやや高くなる傾向があります。

羽毛の信頼性は産地の明確さに左右されますが、品質の良し悪しとは別に考えるべきです。例えば、羽毛の産地として名高いポーランド産であっても、すべての羽毛が上質とは限りません。産地名だけで品質を判断するのは適切ではありません。

ダウンの色と性能:知っておきたい基礎知識

ダウンの色はホワイト、シルバー、茶系の3種類があります。性能に大きな差はありませんが、ホワイト系は人気が高く、価格もやや高めです。

シルバー系のダウンは野生種に近く、ホワイト系よりもやや丈夫とされています。

シルバーグースとホワイトグースの比較写真

ダウンの色について詳しくは、羽毛の色の違いのページを参照ください。

ダウンカラーの確認方法

ダウンの色は、品質表示票や鳥の種類を説明した添付ラベルで確認できます。

羽毛の洗浄度:清潔さと品質の目安

羽毛の洗浄度測定方法

洗浄度は、羽毛を洗浄した水の透明度を示し、500mmや1000mmで表示されます。1000mm以上が理想的ですが、500mmでも十分な品質です。

プレミアムゴールド・ロイヤルゴールドラベルの製品は1000mm以上、それ以外のゴールドラベルは500mm以上が基準となっています。

羽毛の洗浄度の確認方法

日羽協加盟メーカーの製品はゴールドラベルで判断可能です。また、多くの製品には洗浄度を記載した添付ラベルが付いています。

羽毛の臭いの原因と対策

羽毛の獣臭は、洗浄度も無関係ではありませんが、主に未成熟ダウンに多く残っている油脂分が原因です。

低ダウン率のダックは飼育期間が短く、未成熟ダウンが多いため臭いが出やすい傾向があります。信頼できるメーカーのグース90%以上であれば、羽毛の臭いの問題はほぼありません。

羽毛の臭いの確認方法

通販では購入前に臭いを確認できませんが、低ダウン率のダックを避けることで臭いのリスクを減らせます。

羽毛の品質での選び方:まとめとポイント

羽毛布団の暖かさは、羽毛の種類(ダック<グース<マザーグース)×ダウン率×ダウンパワー×充填量×産地で決まります。これらの要素を総合的に見て判断することが重要です。

  • コスパ重視なら、ダウン93%・400dp以上のグースがおすすめです。
  • より暖かさや軽さを求めるなら、マザーグースが最適です。
  • 充填量は羽毛の種類とダウンパワーにより適正量が異なります。低品質な羽毛布団は量を増やしがちですが、重くなり温度調節機能が低下する可能性があります。
  • 側生地やキルト構造も暖かさや寝心地に大きく影響します。
  • 羽毛の産地は、産地偽装もあるため国名だけでなく、メーカーの信頼性も合わせて確認しましょう。
  • 臭いの問題は、グース90%以上であればほぼ回避可能です。
  • 洗浄度は500mmで十分ですが、1000mm洗浄を推奨します。

さらに詳しい情報は、羽毛品質の見分け方ダウンのFAQのページもご参照ください。

グース羽毛布団一覧

羽毛布団の側生地の選び方:快適な寝心地はここから!

羽毛布団の側生地は、中の羽毛の性能を最大限に引き出し、あなたの寝心地を大きく左右する大切な要素です。軽さ、肌触り、通気性、そしてお手入れのしやすさなど、重視したいポイントは人それぞれ。ここでは、あなたの「快眠」を叶える側生地の選び方と素材の特徴を解説します。

側生地選びの重要ポイント

側生地を選ぶ際に特に注目したいのは、以下の5点です。

  • 軽さと柔らかさ: 体へのフィット感を高め、羽毛本来の軽さを最大限に活かします。側生地が重すぎると、せっかくの羽毛の軽さが損なわれ、体にフィットしにくくなります。
  • 吸湿性・通気性: 寝ている間の汗や湿気をしっかり吸収・放出し、蒸れを防いで快適な温度を保ちます。
  • 熱伝導率: 羽毛の持つ優れた温度調節機能(保温と放熱のバランス)を最大限に引き出すためには、いかに素早く体温を羽毛層に伝えるかが重要です。熱伝導率の高い生地ほど、羽毛本来の性能が活かされます。
  • 耐久性: 長く快適に使うための丈夫さ。寝返りが多い方やお子様用には特に重要です。
  • お手入れのしやすさ: クリーニング可否や日常のお手入れ方法も確認しましょう。素材によっては専門のクリーニング店でも断られる場合があるため注意が必要です。

これらのバランスを考慮しながら、主な側生地の素材を見ていきましょう。

主要な側生地の素材と特徴

側生地に使われる素材は、主に超長綿ポリエステル合繊(ポリエステルと天然素材の混合)、シルクなどがあります。それぞれの特徴を比較して、あなたにぴったりの素材を見つけましょう。

1. 超長綿(ちょうちょうめん)

超長綿は、繊維が非常に長く細いため、しなやかで柔らかく、肌触りが抜群です。吸湿性・通気性に優れており、オールシーズン快適に使えます。

  • おすすめポイント: 自然な肌触り、優れた吸湿性・通気性、高い品質感。
  • 注意点: 細い糸(高番手)になるほど高価になり、耐久性がやや低下する場合があります。
超長綿の糸の紡ぎ方と寝心地・価格の関係

超長綿の糸の紡ぎ方には、主に「単糸(たんし)」「双糸(そうし)」「精紡交撚糸(せいぼうこうねんし)」の3種類があります。これらは側生地の柔らかさ、しなやかさ、そして価格に大きく影響します。

一般的に、精紡交撚糸、双糸、単糸の順に高級とされており、この違いが寝心地と価格の差に現れます。

側生地の織り方とペーパー音
平織りツイルサテン

側生地の織り方には、平織り(ブロード)綾織り(ツイル)、そして朱子織り(サテン)の3種類があります。羽毛布団の側生地ではサテン織りが主流で、滑らかな肌触りが特徴です。一方、平織りや綾織りは、布団の動きに合わせて「カパカパ」というペーパー音(紙のような音)がすることがあります。

このペーパー音は通販では確認できないため、音に敏感な方は事前に知っておかないと後悔する可能性があります。

糸番手(太さ)と側生地の重さ

糸番手は糸の細さを表す単位で、数字が大きいほど糸は細くなり、生地は軽く薄く仕上がります。羽毛布団の総重量のうち、側生地は約半分を占めるため、側生地の重さが軽さやフィット感、ひいては寝心地に直結します。

下の図は、様々な糸番手や紡ぎ方によるシングルサイズのサテン織り側生地の重さを比較したものです。ご自身の好みに合わせて参考にしてください。

綿糸の60番手から精紡交撚糸480tまでの太さとシングルサイズ側生地の重さを比較した図
※加工や織り方により実際の重さは少し変動する場合があります。

例えば、100単糸と200双糸は同じくらいの太さでも、200双糸の方が耐久性に優れ、価格もやや高価になります。一般的に、糸番手が大きく、薄くて柔らかい生地ほど、体にフィットしやすく保温性が高まりやすい傾向にあります。

こんな人におすすめ:超長綿

  • 肌触りや通気性を重視する方
  • 品質にこだわりたい方
  • 羽毛の調湿機能を最大限に引き出し、快適な寝心地を求める方

2. 合繊(ごうせん):軽さと機能性のバランス

ポリエステルやテンセルなどの化学繊維と綿を混ぜた素材で、柔らかくコスパに優れます。

  • おすすめポイント: 柔らかいのが特徴、リーズナブルな価格帯。
  • 注意点: 綿の混合率によって吸湿性などが変動します。テンセルは吸湿性が高い反面、湿気を吸うと重くなりやすく、基本的にクリーニングは難しい(対応可能店もあり)ため注意が必要です。

こんな人におすすめ:合繊

  • 軽さ重視で、扱いやすい布団が欲しい方
  • コスパを重視する方

3. ポリエステル:手軽さと保温性

軽量で価格も安い布団素材ですが、吸湿性が低く蒸れやすい点には注意が必要です。

  • おすすめポイント: 非常に軽量、安価。
  • 注目ポイント: 最近では、「+2℃」や「+5℃」といった付加価値を謳う蓄熱性繊維が開発され、室温が低い環境や寒がりの方におすすめです。これらの高機能ポリエステルは一般的なポリエステルより高価です。
  • 注意点: 静電気が発生しやすい場合があります。

こんな人におすすめ:ポリエステル

  • 価格を重視する方
  • とにかく軽い布団が欲しい方
  • 蓄熱性タイプは、寒い部屋で使う方や寒がりの方

4. シルク:最高の肌触りと贅沢さ

非常に軽く、しっとりとした肌触りが特徴の高級素材です。吸湿性と放湿性にも優れており、なめらかな寝心地を求める方には最適です。

  • おすすめポイント: 極上の肌触り、優れた吸湿性・放湿性、高級感。
  • 注意点: 高価であり、デリケートな素材のためクリーニングは非常に難しく(ほぼ不可)、耐久性が低い傾向があります。

こんな人におすすめ:シルク

  • 最高の肌触りと贅沢な寝心地を求める方
  • 肌が敏感な方(刺激が少ない)

ダウンプルーフ加工とゴアラミネート加工

ダウンプルーフ加工のイメージ

ほとんどの羽毛布団の側生地には、羽毛の吹き出しを防ぐ「ダウンプルーフ加工」が施されています。これにより通気性がやや抑えられることもありますが、羽毛の吹き出し防止には不可欠な加工です。

特に注目すべきは「ゴアラミネート加工」です。これはダウンプルーフ加工の一種で、羽毛が吹き出すのを防ぎつつ、非常に高い透湿性(水蒸気は通すが水滴は通さない)と100番手の生地と同程度の通気度(1㎝角あたり1秒間に約2cc)を持つ特殊な加工です。これにより、ムレ感を大幅に軽減し、羽毛本来の調湿機能を最大限に活かすことができます。しかし、ゴアラミネート加工された側生地はクリーニング不可となるため、日常のお手入れには特に注意が必要です。

あなたに最適な側生地を見つけるには?

最後に、それぞれの素材の特徴を比較し、あなたに最適な側生地を見つけるためのヒントをまとめました。

素材 価格 寝心地 重さ 熱伝導率 手入れ
超長綿 幅広い 快適 700~1030g 0.54 普通
合繊 お手頃 普通 900g 綿の量次第 やや難
ポリエステル 安価 蒸れる 750g 0.2 簡単
シルク 高価 快適 700~800g 0.44 難しい

総合的に見て、超長綿の80番手サテン織りの側生地は、品質と価格のバランスが良く、多くの方におすすめできる選択肢です。ご自身の睡眠スタイルや好みに合わせて、最適な側生地を選び、快適な睡眠環境を手に入れましょう。

羽毛布団の「キルト構造」とは?種類と選び方

羽毛布団の内部は、羽毛の偏りを防ぎ、保温性を均一に保つために「キルト」と呼ばれる仕切りで区切られています。キルト構造の違いは、羽毛布団の暖かさ、軽さ、フィット感、そして価格に大きく影響します。

主なキルト構造は以下の4種類です。それぞれの特徴を理解し、ご自身の使い方や求める暖かさに合わせて選びましょう。

羽毛布団のキルト構造:立体1層、2層、3層、ハイマチ、ヨーロピアンキルトの断面図

立体1層キルト(標準的で軽量)

立体1層キルトの断面イメージ図

最も一般的なキルト構造で、表と裏の生地を幅4cm程度のマチ布を介して立体的に縫い合わせています。

比較的軽く快適ですが、布団の厚みがマチ布の部分で薄く熱が逃げやすいのが短所です。価格を抑えたい方におすすめです。

2層・3層キルト(高い保温力)

2層キルト 3層キルト

2層キルトは、上下の層でマス目の位置をずらすことで、縫い目部分からの放熱を防ぎ、1層キルトよりも高い保温力を実現します。3層キルトはさらに中層を加えることで、より保温力を高めた構造です。特に寒い地域にお住まいの方や、冷え性の方におすすめです。

また、2層・3層キルトは、体に接する面のマス目の数が多いため、体へのフィット性が高く、より高い保温性が得られるのも特長です。

ハイマチ密閉キルト(暖かさ、軽さ、耐久性のバランス型)

立体1層キルトの断面イメージ図 ハイマチ密閉キルト

マチ布を7~10cmと広くすることで、布団全体の厚みを均一に保ち、保温力を向上させたキルトです。羽毛の片寄りを防ぐ「密閉キルト」と組み合わせることで、長く安定した使い心地を提供します。暖かさ・軽さ・快適性・耐久性を重視する方に最適な選択肢です。

この密閉キルトは「完全立体キルト」とも呼ばれており、西川株式会社では「ソリッドステーク®キルト」という名称で展開されています。いずれのキルトも羽毛の片寄りを防ぐ構造となっており、安定した使用感が長く続くため、羽毛布団の寿命を延ばす効果も期待できます。

ヨーロピアンキルト(夏用・肌掛け向け)

ヨーロピアンキルト(たたきキルト)の断面画像

マチ布を使わず、表裏の生地を直接縫い合わせたシンプルな構造です。羽毛のマス目間の移動がなく、軽く通気性に優れています。主に夏用の肌掛け布団(ダウンケット)に採用され、保温性は控えめです。

家庭で洗濯できるウォシャブルタイプの羽毛布団に採用されているキルトです。

キルト構造による保温性と選び方のポイント

キルト構造の保温力は一般的に、ヨーロピアンキルト < 立体1層キルト < ハイマチ密閉キルト < 2層キルト < 3層キルト の順に高くなります。

キルトの種類により快適な温度帯は異なり、2層や3層キルトは寒さに強い反面、暖かい部屋では暑く感じやすくなります。

キルト別快適使用温度帯のグラフ

ご自身の体質や寝室の室温に合わせて、最適なキルト構造の羽毛布団を選びましょう。

  • 暖かさ・軽さ・快適性・耐久性を重視するなら、ハイマチ密閉キルト
  • 価格を抑えたいなら、立体1層キルト
  • 特に寒がりな方室温が低い環境では、2層・3層キルト、またはハイマチ密閉キルト

ハイマチ密閉キルト羽毛布団はこちら

3層キルト羽毛布団はこちら

羽毛布団の縫製は国内と海外の2パターンがあり、一般的に国内縫製の方が評価が高い傾向があります。

さらに詳しい情報は、「羽毛布団のキルト」「キルトに関するFAQ」のページもご参照ください。

純日本製羽毛布団の選び方

日本製」と表示される羽毛布団には、実は様々な製造工程の違いがあります。海外で生地を織り、縫製したものを日本で羽毛を充填するだけでも「日本製」と表示できてしまうため、注意が必要です。

日本製羽毛布団の3パターンの製造工程

真の「純日本製」羽毛布団を見極めるには、「国産生地・国内縫製」の表記や、日本の厳しい品質基準をクリアしたJ∞QUALITY認証マークを探しましょう。

長年の業界経験から、国産生地のなめらかさ、国内縫製の丁寧さは格別です。価格は高くなりますが、その安心感と品質の高さから「純日本製」の羽毛布団をおすすめします。
J∞QUALITY認証マーク

より詳しく知りたい方は、純日本製の羽毛布団の選び方(詳細ページ)をご覧ください。製造工程の細部にわたるこだわりは、羽毛布団の作り方(詳細ページ)でご紹介しています。

羽毛布団のサイズの選び方

快適な睡眠のためには、体をしっかり包み込むサイズの羽毛布団を選ぶことが重要です。足が出たり、寝返りで背中が出ると寒さを感じてしまいます。

体格・人数に合わせた最適なサイズ選び

  • 高身長の方(180cm以上)
    通常のシングルロング(150×210cm)では丈が足りない場合があります。丈が230cmの「シングルロングロング(SLL)」など、長いタイプがおすすめです。
    羽毛布団は体を余裕で被うサイズの必要性をアピールする図
  • 体格が大きい方やペアでの利用
    お二人で使用する場合は、背の高い方や体格の大きい方に合わせて、幅の広いセミダブル、ダブル、クイーン、キングサイズを検討しましょう。
    羽毛布団のサイズを、SL、SLL、SD、DL、QL、KLの6サイズを平面図で比較できるように表示した図

各サイズの詳細や選び方のポイントは、羽毛布団のサイズの詳細ページで詳しくご紹介しています。成長期のお子様には、リフォーム・打ち直しでサイズ変更も可能です。

メーカーで選ぶ羽毛布団

羽毛布団の品質を最終的に保証するのは、羽毛を充填し製品化したメーカーです。表示されている品質指標だけでなく、そのメーカーが信頼できるかどうかが非常に重要になります。

羽毛布団の品質指標はメーカーの信頼性に基づいている事を示す図

信頼できるメーカーを見極めるポイント

残念ながら、品質表示への認識や許容誤差はメーカーによって様々です。安心して選ぶためには、以下の点をチェックしましょう。

  • メーカー名の明記:品質表示票にメーカー名が記載されていない製品は避けましょう。
  • 大手メーカーの選択:西川(株)や山甚物産(株)など、長年の実績と厳格な品質管理で高い信頼を得ている大手メーカーは安心です。(ただし、廉価版の製品もあります。)
  • 品質管理の国際規格認証:ISO9001認証を取得しているメーカーは、信頼性が高いと言えます。
  • 日本羽毛製品協同組合(日羽協)加盟:ゴールドラベルの裏面にメーカー名またはIDが記載されています。日羽協の加盟リストも参考にできます。

メーカーの信頼度に関するさらに詳しい情報は、おすすめメーカーでの羽毛布団の選び方(詳細ページ)をご覧ください。

羽毛布団の「暖かさ」で選ぶ

快適な睡眠には、お住まいの室温や体質に合った羽毛布団を選ぶことが大切です。

羽毛布団の暖かさレベルを診断

すべての項目を入力し終えたら、最後に『診断』ボタンを押してください。羽毛布団の暖かさを判定します。

布団サイズ
ダウンの種類
ダウン率(%)
ダウンパワー
羽毛充填量
キルト方式

診断結果は下に表示します。

室温別・最適な羽毛布団の選び方

冬の最低室温とご自身の体質(暑がり・寒がり)をもとに、最適な布団の目安を選びましょう。

下図は、筆者の35年間の経験に基づき羽毛布団の種類や仕様ごとの快適な室温帯をまとめています。

羽毛布団の種類・仕様ごとの暖かさの違いと快適な使用温度帯を示す図

室温別おすすめタイプ

20℃以上
  • 肌掛け布団(例:シングル300-400g前後)。28℃以上はエアコンが必要です。臭いの問題を回避するならグースダウンがおすすめ。
15℃以上
10℃以上
  • グースまたはマザーグース(高ダウンパワー・適量充填のシングル羽毛布団)。
5℃以上
  • グース(高ダウンパワー・多層キルトやハイマチ構造)または高品質マザーグース。
0℃以上
  • 高品質マザーグース(ハイマチや多層キルト構造)または高充填量のグース。

羽毛布団の暖かさを決める要素

羽毛布団の暖かさは、主に以下の要素によって決まります。各要素について詳しく知りたい場合は、各項目のリンクをご覧ください。

下図は、羽毛布団の暖かさに影響する各要素のバランスを示しています。 羽毛布団の暖かさを左右する要素をレーダーチャートにして羽毛布団の暖かさを表した図

体質と季節に合わせた暖かさ調整

個人の体質や季節ごとの室温変化に応じた選び方は、以下のページで詳しく解説しています。

羽毛布団を選ぶ際のプロのアドバイス

羽毛布団は、快適な睡眠に欠かせません。暖かさだけでなく、快適性、価格、お手入れ、耐久性など、プロが選ぶ際のポイントをご紹介します。

羽毛布団の快適性

羽毛布団の魅力は暖かさだけでなく、軽さや温度・湿度調節機能にも優れています。

軽さを重視する場合

羽毛布団の重さの内訳である「羽毛」「側生地」「キルト(仕切り布)」を示した図

軽い羽毛布団を選ぶなら、以下のポイントに注目しましょう。

  • 羽毛の質:少量でも暖かい高ダウンパワーの羽毛
  • 側生地:軽量生地(100単糸または200双糸以上推奨)
  • キルト構造:1層キルト・ハイマチキルト

詳しくは、羽毛布団の重さのページを参照ください。

適温と快適な湿度を重視する場合

理想的な寝床環境を保つには、温度調節機能に優れた高ダウンパワーのグースまたはマザーグースがおすすめです。ムレ感を避けるなら、通気性の高い生地(100単糸または200双糸以上の超長綿)を選びましょう。詳細は羽毛布団の蒸れ感と生地の通気性のページを参照ください。

羽毛布団の価格と品質

コスパを重視するなら、単に安価なものを選ぶのではなく品質とのバランスを見極めることが重要です。快適な睡眠環境のためには、高ダウンパワーのグースダウン(400dp以上推奨)が理想的です。

詳しくは、羽毛布団のランクと相場価格羽毛布団の価格に関するFAQのページを参照ください。

お手入れのしやすい羽毛布団の選び方

羽毛布団は通常カバーを掛けて使用し、正しく保管します。シルクやゴアラミネートなどの特殊生地はクリーニングできない場合があるので、購入時に確認しましょう。家庭での洗濯はウォッシャブルタイプのみ可能です。汚れた際はクリーニング店に依頼してください。

詳細は、羽毛布団のお手入れ・収納FAQ羽毛布団の洗濯のページを参照ください。

耐久性で選ぶ羽毛布団のポイント

長く使える羽毛布団を選ぶには、以下のポイントを押さえましょう。

  • 高品質な羽毛:高ダウンパワーのグースまたはマザーグース
  • 丈夫な側生地:80番手以下の超長綿生地がおすすめ
  • 安定したキルト構造:羽毛の偏りを防ぐ密閉キルトや完全立体キルト
  • 高品質な縫製:国内縫製など、丁寧な仕立て(完全立体キルト等)

詳細は、羽毛布団の寿命のページを参照ください。

プロがおすすめする羽毛布団の選び方

プロが羽毛布団を選ぶ際に重視するポイントを踏まえた、最適な羽毛布団の品質条件をご紹介します。

おすすめ羽毛布団の品質条件

  • 羽毛:ダウン率93%以上が理想。
    • 価格重視なら:グース400dp以上
    • 暖かさ、耐久性、軽さを重視するなら:マザーグース430dp以上
  • 充填量(シングル):マザーグース1.2kg、グース1.3kg推奨
  • 側生地80番手以上の超長綿で国産生地
  • キルト構造国内縫製
    • 暖かさ重視なら:ハイマチ密閉キルト・2層・3層構造
    • 値段と軽さ、通気性なら:立体一層キルト
  • サイズ:体を十分に覆う大きさが必要(ロングロングやキングサイズも)
  • メーカー:信頼できるブランド・メーカー製を選ぶ
  • メンテナンス:クリーニングできない特殊生地は避ける

上記の基準を満たした羽毛布団を選ぶことで、コスパに優れ、上質な寝心地と快適な睡眠環境を実現できます。

具体的なおすすめ羽毛布団は、こちらのページをご覧ください。

おすすめ羽毛布団

口コミ・レビュー、ランキング情報の見方

口コミやランキングは参考になりますが、必ずしも品質を反映するわけではない点に注意が必要です。

詳細は、羽毛布団ランキングと口コミ・レビューの見方をご参照ください。

まとめ:後悔しない羽毛布団選び

羽毛布団選びでは、羽毛・側生地・キルト構造の基本を理解し、特にメーカーの信頼度を確認することが重要です。さらに詳しいチェックリストはこちらを参考にしてください。

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