寝具選びにおいて吸水性と吸湿性は重要な基準です。吸水性と吸湿性の関係は「≒」のようで「≠」です。ほぼ同じ様なイメージですが異なります。

このふたつの特性の意味を理解して、寝具を選ぶとより一層快適な寝床環境を作ることができます。

寝具素材の吸湿性と吸湿性

寝具素材の吸水性と吸湿性の違い

吸水性と吸湿性の違いを一言で言えば、水を吸い取ることと湿気を吸着する違いです。

具体的に言うと吸水性は液体の汗を吸い取ることと、吸湿性は寝床内の空気に含まれる湿気を吸着することの違いです。

繊維素材の吸湿性

繊維の吸湿性

この表は吸湿性を各素材毎に比較したものです。湿度65%での各素材が吸湿した結果として水分量を表しています。

寝具の素材として採用した場合に、各素材がどれだけ寝床内の湿気を吸湿できるかを表しているとご理解ください。

ポリエステル繊維の吸湿性が0.5に対して、ウールの吸湿性は16であり32倍の差があります。ポリエステル繊維の毛布とウールの毛布では蒸れ感が異なることになります。

繊維素材の吸水性

吸湿性は素材繊維1本の吸湿する性能ですが、吸水性は繊維を束ねた状態でどれだけ水を吸い取るかを表しています。

繊維を束ねたものをそうめんに例えるなら、吸水性は「そうめんの一束」がどれだけ水を吸い取るかであり、吸湿性は「1本のそうめん」がどれだけ周りの湿気を吸収するかを表しています。

そのためポリエステル繊維でも、極細繊維にしたもの束ねれば毛細管現象により吸湿性は低くても吸水性は高くなります。汗などを吸水する性能は高くなります。

繊維の加工次第では吸水性が良くなり、汗を吸収する機能が向上するため吸湿性の低い繊維も敷きパッド等に採用される場合があります。

吸湿性と吸水性と保温力の関係

寝具は季節の温度と湿度の変化に応じたものがおすすめです。寝床内の環境は33度で湿度50%前後が理想です。

寝床内の熱は基本的に体温が源になっています。寝床内の水蒸気は暖まると繊維素材に吸湿され水になる際に凝縮熱を出します。吸湿性が高いほど熱を蓄えることができる素材と言えます。

ウールは吸湿性16と高いため、保温性を確保して蒸れ感を解消するにはウール素材の寝具が冬場は理想的です。

ポリエステルは吸湿性が0.5なので暖かくなり過ぎると蒸れ感がでます。吸湿性の限界を超えるとヒートロス状態と言われる汗をかき体温を低下させることになります。

そこで、吸湿性の良い他の素材と組み合わせることで吸水性を高め限界値を上げる工夫がされた合繊が開発されています。

吸湿性の低さを補うため、極細繊維にして束状にして吸水性を高める方法をとっている製品もあります。

寝具素材の天然繊維と化学繊維の違い

天然繊維は動物系のウールとか植物系の綿などであり、化学繊維は石油から作られるポリエステルとか木材に由来するレーヨン等です。

化学繊維は天然繊維の特徴を低コストで実現できないかとまねて作られたものです。レーヨンはシルクを真似て作られたもので肌触りはシルクに似ていますが、吸湿性と熱伝導率において麻の特徴があるため夏の寝具素材としても用いられています。

そのため化学繊維には、シルク調とかカシミヤ風とかシルクタッチなどの表現がされたものが多く存在しています。化学繊維は天然繊維の特徴を今一歩及ばないのが現状です。

まとめ・寝具素材の選び方

寝具を選ぶ際には、素材がどのような特性のものかを吟味してください。コスト的には化学繊維のものが優れていますが、快適な温度と湿度の寝床環境を得るにはやはり天然繊維の寝具がおすすめです。

『吸湿性』と『吸水性』はよく似たイメージですが、寝床内の蒸れ感を解消するにはこの違いを理解して寝具を選んでください。

毛布・ケット類は『吸湿性』と『撥水性』に着目して、敷きパッド・敷きシーツ類は『吸水性』が重要な場合があります。

夏以外の季節にお勧めはウール素材の寝具ではないでしょうか?特にムートンパッドなどはウール素材の特性と高密度な毛が作る空気層などもおすすめポイントです。

筆者:野口 英輝

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