羽毛布団の保温力を数値で表せないかと色々調べてみると、ダウンつながりでダウンジャケットの保温力を表す単位に『クロー値(clo値)』がありました。

このクロー値はまだ周知されていないのが現状で、羽毛布団の性能を表す指標としては使われていません。しかし、羽毛布団の保温力を知るには便利な単位なのでクロー値について解説します。

羽毛布団のクロー値とは

クロー値の定義とは、温度21℃、湿度50%以下、気流0.1m/秒以下の環境下において、成人男性が静かに椅子に座った状態で暑くも寒くもなく快適に感じる保温性のことです。

この快適な状態(皮膚温度が33℃)と感じる服の保温力を1クローとしています。

クロー値の測定方法

もちろん生身の人間に服を着せて測定するのではなく、サーマルマネキン法と呼ばれて、アルミ製のマネキンに発熱体と温度計を取り付けたマネキンに服を着せて測定します。

服の場合はこの測定方法で保温力が数値化できますが、寝具の場合は敷き布団の環境条件をどのようにするのか、椅子に座った状態では敷き寝具の保温力を測定出来ないという問題があります。

ロッククライミングの途中に芋虫のように宙づりで羽毛の寝袋の保温力を測定するのであればクロー値も有効な指標と言えます。

現状では、敷き寝具の保温力の問題を解決しなければ羽毛布団の保温性の指標にすることは難しいと言えます。そこで他に羽毛布団の保温力を、測定して数値化する方法はないのか調べてみると下記の方法がありました。

保温力の測定方法

保温力を測定する方法は、熱伝導率の測定と似ていて熱源から試料を通じてどの程度の熱が放熱されたかを測定する方法です。JIS L 1096のA法とサーモラボⅡ試験機を使う方法があります。

これらの方法は、羽毛布団と言うよりかダウンの保温力を測定するのに向いています。

しかしダウンパワー値の測定方法のように、試料のダウン量、室温、湿度などの測定する際の環境条件が決まっていない状態では上記の2つの測定方法も使えません。

ダウンの保温力の測定方法

現状の羽毛布団の保温力は、ダウン率ダウンパワー、ダック、グース、マザーグースなど採取された鳥の種類、ダウン量、布団の内部構造、生地素材などを総合的に判断して推測しています。

羽毛布団のクロー値の課題

現状は寝具業界に共通する羽毛布団の保温力を表す確定した指標はありません。ただし最近は羽毛布団の暖かさの目安として「クロー」の単位が使われ始めています。

羽毛布団の保温力を示すクロー値が製品にラベル等で添付されれば、羽毛布団を選ぶ際に、寝室温度とか寒がり暑がりと言った体質の違いをクロー値を指標にして選ぶことができます。

西川(株)とか日羽協が中心となり、サーマルマネキン法のマネキンが椅子に座った状態から寝た状態に変更した新たな測定方法または換算基準が創られるのを望みます。

寝床内の適温温度は33℃±1℃で湿度50%前後が理想です。この快適温度は敷き寝具と掛け布団の保温力と室温とが絡んでうまれる温度です。特に寝床内温度の敷き寝具の保温力のウェイトは大きく、この条件を一定の基準を設けてクロー値を測定する必要があります。

筆者:野口 英輝

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