敷きパッドの役割は、寝具の中でも四季の温度と湿度変化に応じて寝床内の温度と湿度調節と体圧分散を補完するものです。そのため冬・春秋の端境期・夏用の3タイプそれぞれに選び方のポイントが異なります。

体圧分散機能は、敷きパッドはマットレスと敷き布団の上に掛けて使用する為ない場合もあります。

それでは、敷きパッドのタイプ別の基本的な選び方と選ぶ際の注意点を説明します。

敷きパッドの選び方

敷きパッドの選び方

冬・春秋の端境期・夏用の3タイプの敷きパッドの主な役割は下記の通りです。冬用はなんと言っても保温が主目的になります。春秋の端境期の敷きパッドは温度調節が主目的です。夏用の敷きパッドは吸湿から放熱が主目的になります。

3タイプの敷きパッドに共通している事は、体重をかけて密着しているためパッドに体温が伝わり易い状態であることです。そのため敷きパッドは、熱と湿気を如何に快適な状態にコントロールできるかが選び方のポイントとなります。

冬用の敷きパッドの選び方

保温を主目的とする敷きパッドは、熱を蓄える素材で作られている必要があります。さらに適温を保つための工夫が必要です。

繊維素材の吸湿性と熱伝導率

繊維の吸湿性と熱伝導率

この表は、吸湿性と熱伝導率を素材毎に表したものです。この数値が大きいほど熱が伝わり易いことを表しています。

例えば熱伝導率を車道に例えるなら制限速度が時速100kmの道と30km車線の違いのようなものです。当然100kmの道の方が車も速く進むように、熱伝導率も高い方が熱が伝わり易くなります。

敷きパッドは季節の温度と湿度の変化に応じたものがおすすめです。寝床内の環境は33度で湿度50%前後が理想です。

熱を蓄える素材の選び方は、素材毎の熱伝導率の違いを理解する必要があります。空気<ポリエステル<羊毛<絹<綿<レーヨン<麻の順に熱の伝わり方は速くなります。

冬用の敷きパッド選びのポイントは、保温力を確保するため熱伝導率の低い空気・ポリエステ・羊毛を素材として使うのが理想です。

冬用の敷きパッドの構造

保温性を確保するため、表層には普通の布帛(ふはく・織った生地)より空気を含む厚みのあるニット(編み物)あるいは起毛を使ったものが暖かです。中層には空気層を作るため中綿の充填物を入れたものがおすすめです。

表層の空気を含む厚みのあるニット・起毛の生地、中層の充填物の空気層は共に空気を利用しています。下層には綿あるいはポリエステル系の布帛を使用したものが一般的です。

おすすめの冬用の敷きパッド

冬用の敷きパッドは保温性に優れていることが重要なので、熱伝導率が低く吸湿性の高い素材の使用と空気層をうまく形成する構造が選ぶポイントです。

冬用の敷きパッドで一番おすすめなのはムートンパッドです。次いで羊毛を使用したパッドになり、化学繊維のポリエステルとナイロンなどを混成したパッドです。

ムートンパッドがおすすめである理由は、ムートンの毛が密生しているため内部に空気層ができ、熱を程良くためることができるためです。また中綿素材を充填したタイプは、中綿がつくる空気層にも熱をたくわえることができるためです。

熱伝導率はポリエステル<羊毛の順ですが吸湿力が羊毛の方が勝るため、快適な温度を得るには各素材には羊毛の方がおすすめです。寝床内部の熱は凝縮熱によるものであり吸湿性と関係があります。詳しくは下記ページをご覧下さい。

寝具の吸湿性
寝具素材の吸水性と吸湿性

寝具選びにおいて吸水性と吸湿性は重要な基準です。吸水性と吸湿性の関係は「≒」のようで「≠」です。ほぼ...

端境期の敷きパッド選び方

端境期のパッド選びが最も難しい!その理由は温度変化が激しいからです。1日の最低温度と最高温度の高低差が激しく、日ごとに寒い日暑い日が入れ替わるためです。

端境期においてもおすすめはムートンパッドです。ムートンパッドは、羊毛の熱伝導率と空気層による温度調節機能により快適な寝床環境を実現できます。

表層に綿と中綿に羊毛を使用した敷きパッドも端境期に快適にお使い頂けます。

端境期の温度変化に対応できる綿とか羊毛などの天然繊維の素材を使用した敷きパッドがおすすめです。

夏の敷きパッド選び方

夏の敷きパッドは、放熱と吸水・撥水に優れた素材と構造が必要です。さらには家庭洗濯ができる素材がおすすめです。

放熱と吸水・撥水に優れた素材となると、天然素材では熱伝導率の高い麻が一番おすすめとなります。

化学繊維では接触冷感素材のレーヨンやポリエチレン樹脂との複合素材などが一般的に使用されています。これらの素材は放熱と撥水性を追求して開発されたものです。

夏の敷きパッドは冬用パッド素材の真逆の特徴をもつ素材で作られていることになります。共通しているのは空気層をつくり熱と湿気をコントロールしている事です。下記の画像はパッド内部の空気層の事例です。

夏の敷きパッドの空気層は、空気を移動させることで素早く放熱させることが目的です。

夏用パッド内部の空気層

夏の敷きパッドでおすすめは、ラミーもしくはリネン問わず上質の麻100%の側生地と麻100%の中綿素材で作られたパッドです。

使用の利便性

敷きパッドは敷き布団の上に掛けて使用するため、四隅の平ゴムで敷き布団の四隅に簡単に取り付けずれるのを防止いる機能が付いたものがおすすめです。

夏向きの敷きパッドは洗濯回数も多いので丁寧な縫製の日本製をおすすめします。

敷きパッド選びの注意点

熱伝導率とか吸湿性等の素晴らしい特徴を持つ素材でも、素材が100%でなく混成されていれば複合素材の特徴が加味されたものになります。相乗効果がある場合もあればコスト優先のために混ぜている場合もあるので注意が必要です。

『麻の敷きパッド』の場合に充填物にポリエステル綿を入れた場合、体の熱は表面の麻の生地に0.68の速さで伝わります。その後、麻の生地の熱はポリエステル綿に0.2の速さで伝わります。単純に計算すると麻の生地に0.42分の熱が残り、交通渋滞ならぬ熱渋滞が発生して麻のヒンヤリ感は続きません。

敷きパッドを選ぶ際には素材の熱伝導率での組合わせバランスをチェックして、夏向きは熱渋滞が起こりにくい素材を組み合わせたパッドをお選びください。冬向きは逆に熱伝導率の高い素材と組み合わせると放熱してしまいます。

敷きパッドの保温性、放熱性、吸湿性、吸水性はは、素材のもつ個々の特性と関係しますが、空気層との組合わせをうまく利用することでより一層効果を増します。敷きパッドの空気層の形成状態をチェックしてお選びください。

パッド4角の平ゴム

四隅の平ゴムで取り付ける場合は通常の敷き布団の厚さを想定した長さが一般的です。

敷きパッドの長さと敷き布団・マットレスのサイズを合わせる必要があります。仮に200cmのマットレスに210cmの厚みのある敷きパッドを掛けると10cm余ることになります。

ベッドのように高さがある場合に、この10cmに足をかけると踏み外すことになり危険です。あるいはベッドによっては10cm長いと入らない場合があります。

ベッドの厚みのあるマットレスに取り付けられる長さのものは珍しいのが現状です。ムリに取り付けると破損することもあります。

各素材には品質ランクがございます。ムートンパッドにおいては食用の副産物のような原皮を利用したものからムートンシーツ用に飼育された原皮もあります。

羊毛、シルク、麻などの天然繊維も同様にランクと品種による特徴が異なります。このことを十分に理解して選んでください。

筆者:野口 英輝

関連サイト

敷き布団の役割と選び方

敷き寝具の中でもマットレスを含め敷き布団の役割は大切です。どのように大切なの...

ムートンパッドシーツ選び方
ムートンパッドシーツの選び方・

ムートンパッドシーツの選び方のポイントは毛の密度が高い高密度タイプのム...

Q-max値とは

寝具におけるq-max値は、寝具の瞬間的なひんやり感の指標です。寝具選びには組成素材の熱伝導率...

熱伝導率を自動車道のスピードに例えるイメージ図
熱伝導率とは

寝具の寝心地は、素材のもつ熱伝導率と空気層をうまく利用することで差がでます。...

敷き布団の除湿シート
敷き布団が湿気る原因・症状・対策

敷き布団が湿気る原因と症状・1日1分の対策を寝具のプロが解説。...