精紡交撚糸の特徴

 同じ太さ(番手)の糸と比べると光沢があり、表面がなめらかであることが特徴の1つです。強度が10%程度強くより細い糸を作ることができるのも特徴としてあげられます。 この2つの特徴は羽毛布団の生地として利用すると、軽くて柔らかな風合いの布団側生地として活かすことができます。 最大糸番手の480tの生地の重さは染色により異なりますが1平方メートルあたり85g-90gです。

精紡交撚糸の構造

 糸の構造には、基本的に単糸と双糸の2種類があります。精紡交撚糸は単糸に分類されますが、その構造は双糸の特徴を持っています。 繊維を撚り1本の糸にしたものが単糸です。2本の単糸を撚り合わせて合糸にしたものが双糸です。 同じ太さ(番手)の糸の場合表面は単糸がなめらかですが強度は双糸が強いです。 単糸になるまでの繊維の撚りを弱くした状態の糸を粗糸と言います。この2本の粗糸を撚り合わせて1本の糸にしたものが精紡交撚糸です。

精紡交撚糸の綿花

綿花

 綿花とは、写真の白い部分を指します。綿繊維の集合体のようなものです。この白い繊維を解して繊維の長いもの順に並べたものが下の写真です。 綿繊維の長さは品種により異なります。繊維長が20mm未満のものを短繊維綿と呼び、34.9mm以上の繊維長があるものを超長繊維綿と呼んでいます。 羽毛布団の生地に使われる精紡交撚糸は繊維長の長いものに限られます。


綿花の繊維

 精紡交撚糸の中でも、番手の大きい480t糸になると細さと強さが必要になります。 そのため使用される綿花の品種はインド綿最高峰の綿花であるSUVIN(スビン)になります。

 SUVIN(スビン)は、インド原産のスジャータ綿と海島綿との交種によりできたハイブリッドコットンです。特徴は繊維の長さと細さにあります。 繊維が細いため糸に撚ったときに少ない本数で糸にすることができます。羽毛布団を軽くするためには側生地を細い糸で織る必要があります。

糸番手とは

 糸の番手とは、糸の長さと重さにより算出される糸の太さを表す単位です。1ポンドで1ヤードの長さの糸を1番手と決めています。 1ポンドで2ヤードあれば2番手の糸となります。 100番手の糸は1番手の100倍の長さがあり、重さは1ポンドで100ヤードの長さがあることになります。

 精紡交撚糸480tの太さを直径にすると0.0016mmです。 高級羽毛布団に使用されている100番単糸の太さを直径にすると0.0038mmで480tの約2.4倍の太さがあります。 ちなみに人毛の平均は0.08mmです。糸番手は600tも試作されたようですが、羽毛布団の生地として実用化するには課題が残されているようです。

精紡交撚糸の製造工程

  • 1.打綿工程、原綿から不純物を取り除き、平らな帯状に形成する。
  • 2.梳綿(りゅうめん)工程、1の工程でできた平らな帯状の綿を針で解して繊維を平行にしながら紐状に加工する。紐状のものをカードスライバーと呼びます。下の写真の3番目
  • 3.精梳綿工程、コーマ(櫛)で繊維をすくイメージで短繊維、ネップ等の除去する。コーマスライバーと呼びます。
  • 4.練条工程、2または3の工程でできた紐状の綿を複数束ねて1本化すると共に均一化しつつ延ばす。この工程2回する。
  • 5.粗紡工程、4の工程でできた紐状の繊維に撚りをかけて細く延ばす。ここで粗糸ができる
  • 6.精紡工程、5の工程でできた2本の粗糸を撚り合わせて1本の糸にする。管糸(管状の糸巻きに巻かれた状態)
  • 7.仕上工程、管糸の状態のものをセンサーを通して糸の不良部を削除して空気の力で1本の糸に結合して、複数の管糸の糸を接合して大きな糸巻き(チーズ)にパッケージ化する。
  • 8.毛羽(ケバ)焼き工程、完成品に近い糸の表面に産毛の様な毛羽をガス焼き処理にて除去することで、更になめらかな糸に仕上げます。

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綿繊維の短繊維

 工程3の精梳綿工程とは、短い繊維を取り除き糸表面の毛羽を少なくする処理です。画像の右端の黄色い枠の部分の短い繊維の部分を取り除く処理です。 繊維長の長い部分だけを使うことは、糸表面はなめらかになりますがコストは高くなります。上質の羽毛布団生地にするためには精度を上げて行きます。

 特に7の工程は自動化されていて、糸の欠点部分をセンサーが感知すると、細いとか太いとかの欠点部分の前後にて糸を切り不良部分を取り除いた後、 その前後の糸を空気の力で接合して1本の糸にする工程は神業の様です。

精紡交撚糸を布に織る

織物の三原組織イメージ

 羽毛布団の生地はサテン織り(ヨコ朱子織)が一般的になっています。ジーンズの生地のように斜めに織り柄が出るような織り方です。 経糸と緯糸が交互に織るのではなく緯糸が表面に多く出るように織ります。 画像の右側が朱子織のイメージ図です。経糸が表に多く見えますがヨコ朱子織の場合は画像を裏から見たイメージです。

 羽毛布団の生地に使われている精紡交撚糸は、緯糸は480tの糸を使用して経糸には240tの糸を使用しています。 両方480tでは強度の問題から生地に織れないと思います。 一般的に360tと表示されている生地も同様です。経糸は太いものを使用しているはずです。

精紡交撚糸480tの生産量

 精紡交撚糸480tを織り込む織機の横で見ていましたが、1mm程度織れたかもしれない程度です。 湿度の関係いで夏場は生産率がよいのですが冬場には逆にさがる様です。 精紡交撚糸480tの生地の生産量は、平均すると1日あたりシングルサイズの羽毛布団1枚分程度です。

羽毛布団用の生地に染色

 羽毛布団の生地の多くは柄がついています。 この柄を生地に染色をする工程を説明いたします。仕上がった生地は、表面の毛羽を焼き付着している糊等を落として漂白をしていきます。 その後、生地幅を整え生地目を矯正します。柄をプリントする技法は何種類かありますが柄の模様等により決まります。

 羽毛布団の生地は、通常ダウンプルーフ加工と言って生地の目からダウンの吹き出しを防ぐ加工がされています。 その際に生地の通気度を測定しながら羽毛布団に適した柔らかさ、風合いを復元する加工がされます。

精紡交撚糸480tの染色

 羽毛布団の織物生地は、引き裂き強度、通気度、・・・などをパスする必要があります。 480tの生地はこれらの属性をパスして、軽さと柔らかさ等の上質の風合いを出す必要があります。 そのため、染色にいたる前処理においても、高級羽毛布団生地である100番単糸サテン生地よりか遙かに繊細な処理がなされています。

精紡交撚糸480tの羽毛布団の重さ

 高級羽毛布団に使われている100番単糸サテン生地の重さは1平方メートルあたり約100gです。 精紡交撚糸480tの羽毛布団の生地の重さは85g-90gです。シングルサイズの羽毛布団1枚の表裏の生地は約7平方メートルです。 仮に90gとすると約7平方メートルなので90g×7 = 630gになるので、1枚の羽毛布団の表裏生地の重さは精紡交撚糸480tの場合だと600g-630g程度になります。 単純に100番単糸サテン生地と比べると70g-100gの差が出ます。 更に精紡交撚糸の生地を使用する羽毛布団には、それなりに上質のダウンを充填するため少量でよいため更に軽くなります。 たぶん多くても充填量は1.1kg程度だと考えられるため、マスに仕切る布などを含めて総重量は1900g程度以下も可能だと思います。 精紡交撚糸480tの羽毛布団は軽くて暖かいと言えます。ダウンと生地の重さが布団のおもさです。 こちらに軽い羽毛布団について説明したページをご一読下さい。